「プロティアン・キャリア」とは

環境が目まぐるしく変わる中で、自分が目指すキャリアにこだわり、実現していくということの難しさを痛感する時代となりました。キャリア理論の新しい概念を提唱しているダグラス・ホールは、一つのキャリアビジョンに捕らわれず、変貌自在に環境に適応しつつ自分らしさを保っていくキャリアの在り方が重要な時代となったと考え、ギリシャ神話の海神・プロテウスに因んで「プロティアン・キャリア」と呼びました。

例えば、就職・転職を検討している人が、研究職の仕事にこだわりたかったけれど、研究費が削減傾向にあり、ポストが減る時代の変化をとらえ、よりポジションの多いコンサルの仕事に切り替えて探し、そこで分析力を鍛えようと考えることがこれに当たります。

プロテウスの意外な一面

そう聞くと、ギリシャ神話のプロテウスは自律的・チャレンジ精神旺盛なキャラクターに思われますが、プロテウスが変身するわけをよく見ると、意外な一面があります。

プロテウスはあざらしなどの世話をして暮らしていますが、予言の能力を持ち、しかし、その能力を使うことを好まないため、人が予言を聞きにやってくると次々に色々なものに変身するのです。プロテウスを巡っていくつかの格闘の神話がありますが、その内容は、予言を聞き出したい方が、プロテウスを格闘の末押さえつけて予言を言わせ、それに従って問題を解決したというストーリーです。

確かにプロテウスは変身しても自分らしさは失っていないのかもしれませんが、その動機が、能力を使いたくない(あるいは働きたくない・役に立ちたくない!?)し、そうした理由を相手に言葉で伝えるのも嫌で(アサーション<自分も他者も尊重した自己主張>からも程遠い!?)、ひたすら逃げる手段として変身しているようにもみえます。

これでは主体的なキャリアを追及しているとはいいがたいですね!

過度に期待をされると、NOと言えず、のらりくらりと逃げ回るが結局引きずり出され、ずたずたにされながらも結局は期待に応じてしまう、これまた良く見受けられるサラリーマンの姿のようです・・・

おわりに

ダグラス・ホールの考えたプロティアン・キャリアは、環境変化を生き抜くキャリアの新しい考え方として、とても重要と思います。

この春、色々な形で環境変化を経験している方は多いでしょう。自分の目指すキャリアから遠ざかったとがっくりした人もいると思いますが、まずは新しい環境に適応してみると新しい自分に出会えるかもしれません。