新入社員の皆様は入社式、続く研修期間と、同期一同揃って新生活がスタートし、喜びや期待と同時に緊張と不安もあってドキドキした日々を過ごしておられることでしょう。

初めのびっくりは、もしかしたら入社式で歌う社歌かもしれませんね。非常に意気込んで入社したのに、初めにやらされたのが社歌の特訓でうんざりと思うかもしれませんが、それもまた職場適応に向けての最初のハードルと割り切り、あるいは滅多に歌わないので!貴重な経験と思って取り組んでください。最近特にグローバル展開の企業において、社歌は社員の心を一つにする手段として見直され、新しい社歌を作る動きも広まっているそうですよ。

社歌に限らず、人によってはマナー研修なんてくだらない、ためにならない、と思うかもしれませんが、ここを逃すと長いキャリアの中で学習する機会はなくなりますし、マナーの習得は、次に述べる職場適応の第一ステップに該当します。

職場への適応のための4つのステップ

職場への適応のためには4つのステップがあると考えられています。

第1ステップ

フォーマル・インフォーマルの組織のルールや規制を習得する段階です。

フォーマルなものとは、職場の規則や規制、コンプライアンスなど明文化されたもので、文書などで学ぶことにより習得します。インフォーマルなものとは身だしなみ、お客様や同僚の接し方、部店の雰囲気が例となり、日々の業務を通じて体で感じ取っていくものとなりますので習得には少し時間がかかるでしょう。

第2ステップ

仕事をする姿勢を習得し、態度に表わす段階です。例えば皆さんにご指導くださる育成担当の方など、モデルとなる人から学びながら行動にしていく段階です。

第3ステップ

他者との調和のとれた人間関係を形成する段階です。学生時代までは苦手な人、嫌な人を避けていくことが可能でしたが、職場においては同僚やお客様との関係、様々な年代、バックグラウンドの方々との関係など多様な関係性をとりもつことが重要となります。

第4ステップ

自分の価値と組織の価値を統合する段階です。仕事を習得するに従い、自分はこうと思うことが組織の考えと異なり、苦しむということがあるものです。そうした時にそのずれを自分なりにまとめ上げていく力を養っていくということが適応のための最終段階となります。

しっかりとした職場適応の末には

これら4つのステップを経て深い意味で、「自分はこの会社の人間だ」とか、「この仕事に自分らしさを感じる」という、アイデンティティの形成が可能となります。そしてアイデンティティの形成があるからこそ、知識やスキルの習得が進み、良いパフォーマンスへとつながっていくのです。

どうでしょう。第3、第4ステップとなると、なかなか難しいと思うでしょう。

ここまで達成するにはやはり3年程度かかるというのが私の臨床の感覚です。そして多くの会社では入社してから一定の期間(概ね2~3年)を、呼び方はともかく、本格的な戦力となるための準備期間とみているのではないかと思うのですが、この時期の適応の質は次のキャリア確立の上で非常に重要と考えています。

職場に適応していく時間やプロセスは人によって異なります。繰り返しになりますが、入社3年ほどまでにどれほど深いレベルで職場に適応できているかが次のキャリアの確立に大きく影響しますので、どうぞ色々な経験の機会を大事に過ごしてください。