アメリカのバイデン大統領が今月21日にコロナ感染となり、27日に復帰したもののわずか数日で再陽性となり、再休業に入ったというニュースがありました。回復して、「さあこれから遅れを取り戻そう」という矢先に再休業となることは、心に大きなダメージを残します。

このところ、様々な法人の皆様より、メンタル不調により休業なさる方の増加の話を伺います。COVID-19の場合は客観的なテストによって復帰のタイミングが明らかとなりますが、メンタル不調の場合、復帰の目安はわかりにくいものです。そして、一旦復帰したのに、しばらくたって再休業となることの心のダメージは大変大きなものです。

こうした心のダメージを避けるためにも、復帰後の定着まで見据えた職場復帰判断が重要です。コロナ禍で職場復帰判断が難しくなった法人が増え、復帰後の再休業のケースもよく耳にしますので、今回は思いつくことを述べてみます。

コロナ禍で難しくなった職場復帰判断~特に在宅勤務の方

皆が通勤することを前提としていた時に職場復帰判断の目安として重視されていたのが、“通勤時間も含めて毎日の就業に耐える体力にある”ことです。

短時間勤務から徐々に始められる段階就労を仕組みとして持っている法人は、初日から完全フルタイムの法人に比べて復帰のハードルは下がり、求められる回復レベルは法人によって異なります。それでも、往復の通勤も含めての体力の確認はそれなりにハードルのあるものでした。

コロナ禍で在宅勤務の働き方が入ってきて難しくなったのが、何を基準に復帰を判断するかという点です。通勤訓練までは求めず、在宅勤務の就労に耐える体力の確認で良しとすることで、十分な体力の回復のないまま復帰してしまい、復帰後しばらくたって再休業してしまうケースが散見されるようになりました。

全員が完全在宅勤務という法人においては、他の体力回復の確認方法が難しいところですが、週に何度か出勤する法人においては、在宅勤務とはいえ週に何回か通勤を行っていただき、慎重に復帰判断する先が出てきました。在宅勤務は対面に比して部下の様子を観察することが難しく、管理職の皆様は復帰後のフォローにも大変苦労しておられると思います。

再休業の精神的ショック

この度のバイデン大統領は、今回は軽症とはいえ、再休業に入ったことの精神的ショックはとても大きいのではないかと推察します。メンタル不調の方についても、復帰して、しばらくたって再休業となる精神的ショックは大変大きなものです。

復帰の時は、不安をもちろん抱えつつも、「頑張りたい」「こんどこそは」という気持ちや、「それまで会社を休んでしまって周囲に迷惑をかけた」気持ちなど、様々な想いがあります。

遅れを取り戻そうと頑張っているうちに症状が再燃して再休業となる時、多くの人が抱くのは絶望感です。「またダメになった。自分はもうこの先復帰できる気がしない」「自分にそもそも能力がないからこうなった」など、自分を厳しく責め、人によっては自殺のリスクが高まります。

再休業に入られる方の中には、復帰を焦り、定着後まで見据えた十分な回復がないまま復帰なさる場合が多くみられます。重要なのは復帰を焦らず、十分な回復まで待つことです。

また、復帰後も、遅れを取り戻そうと自分にプレッシャーをかけるのではなく、一つ一つ、丁寧にステップを踏んでいくことが大事です。体調には波がつきものですので、調子が悪い日は少しステップバックするなどで、こまめに疲労をコントロールしていくことです。復帰後概ね3~6か月に疲労のピークが来ますので、そこをどのようにしのいでいくかが復帰後定着の大きなポイントとなってきます。

再休業に入る方の周囲の方は、本人の精神的ダメージが相当大きい可能性があると認識しましょう。頑張って復帰したのにうまく行かない傷つきや焦り、罪悪感などに寄り添ってあげてください。そして、健康の回復が第一なので焦らずゆっくり休養することを勧めてください。

再休業に入る方にとっては、自分自身について振り返る良い機会になると思います。まずは症状コントロール、そして徐々に復帰に向けてのリハビリに取り組んでいきましょう。焦らない、そして復帰を諦めない、これが大切です。

日々猛暑でうんざりしますが、1日1日、頑張った自分をねぎらいながら過ごしていきましょう。