藤井四段の快進撃で将棋盤が爆発的な売れ行きとのことですね。祖父母や親から手習いを受けて将棋や囲碁を始める子供は随分と減り、親も子も時間があればインターネットサーフィン、ユーチューブ、SNS、オンラインゲームなどに没頭する、そんな時代ですので、とても新鮮に感じます。

インターネット依存と精神症状

子供の過度のインターネット依存は深刻な精神症状を引き起こすことがあります。

私はアメリカの国家資格の5年毎の更新のために主にオンライン学習で継続勉強中ですが、現在購読中のテキストの中に「インターネット依存と精神障害の共存症」という興味深い章がありましたのでその一部をつたない翻訳でご紹介します(引用文献後述)。

この章では2006年から2015年までの43の研究結果の中から、韓国における74,980名の中学、高校の生徒対象の研究、ドイツにおける1,435名の思春期対象の研究、オーストラリアの1287名の中学生対象の研究、トルコの12歳~15歳まで60名の研究などが示されています。インターネットの過剰な利用者(またはポテンシャルなインターネット依存者)には、通常の利用者に比べてより高い比率で、以下のような精神症状や問題がみられるといいます。

 

  • ADHD(注意欠陥多動)
  • 社会不安
  • 抑うつ
  • 自殺行為

思春期はその発達過程において、情緒的に不安定になりやすいという特徴があり、インターネット依存がそれらをさらに悪化させるという意味なのだろうと私は理解しています。

インターネット依存とパフォーマンス

このインターネット依存の話はビジネスに無縁ではないように最近感じています。

今の20代の社員たちの中には早ければ幼稚園から色々なゲームソフトに夢中になり、中学でMixiのSNSやインターネットに耽った人もいるでしょう。社会人となっても、夜更けまでネットの世界に没頭している人も多くいます。インターネットの過剰な利用者には以下のような問題が生じるといわれています。

 

  • 時間感覚の欠落
  • インターネットから離脱した時の苛立ちや緊張、抑うつ感
  • より良いソフト、より長い利用時間を求めてしまう耐性
  • うそをつく、職場における低い業績、社会的孤立

職場で時間管理ができない、作業量の見積もりや作業計画をうまく立てられないなど、ビジネスマンの基本のところで躓いてしまう方の中には、子供のころからネットゲームやSNSに耽っていたという方が散見されます。

残念ながらインターネット依存は最新のアメリカの精神疾患診断マニュアルであるDSM-5において「今後研究されるべき疾患」と位置づけられ、治療方法などまだまだわからないことが多いのが現状です。

先進的に取り組んでいる韓国では2011年11月から「シャットダウン制度」を設け、16歳未満の青少年には、IDがなければ午前0時から翌朝6時まではネットにアクセスできない仕組みとしたそうで、今後効果が検証されるところです。

働き方改革で、より短い時間で生産性を高めることを要求される時代となりました。

藤井四段は天才といわれる方ですから我々庶民が学びとることは難しいかもしれませんが、駒を指す、限られた持ち時間の中で並外れた集中力、思考力を発揮できることは、幼いころから夢中になった遊びがインターネットゲームではなく、将棋であったことと間違いなく関係はあるのでしょう。

引用:Internet Addiction: Comorbidity with Psychiatric Disorders,Direction in Rehabilitation Counseling, Continuing Educational Program, Vol27,2016)