厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)は全国の事業所、 労働者を対象とした大規模調査で、労働者の仕事や職業生活における不安やストレスの実態を把握する上で大変重要な調査です。

長年蓄積されて来たデータがコロナ禍の影響か、H30年を最後に更新されなくなり、「ああ、もうトレンドが追えない!」と思っていましたが、7月下旬に令和2年10月時点の調査結果が発表されました。

労働者のストレス状況が把握できる内容ですので、 わくわくしながら中身を見てみました!私自身意外に感じたこともあれば、新たに気づいたこともありましたので、抜粋した情報をご紹介します。

意外?“労働者の仕事や職業生活におけるストレス”は大幅に改善

本調査の中で最も注目される項目として、“仕事や職業生活において強いストレスとなっていると感じている事項があると答える労働者の割合”があります。長年にわたって6割弱からなかなか減らないデータでした。

ところが今回調査では、強いストレスと感じる事項があるという労働者の割合は54.2%と、H30年58%から大幅に減りました。減少は、H25年調査以来7年ぶりです。

カウンセラーとしての肌感覚では、コロナ禍で大小様々の変化が職場に一気に押し寄せ、人々に強いストレスをもたらしたと感じてきましたので、私にとっては意外でした。

強いストレスと関連のある項目として「仕事の量や質」があります。本調査の残業時間についての調査結果をみてみると、”1か月間の時間外・休日労働時間数が45時間超80時間以下の労働者のいた事業所の割合”は16.3%(H30年は25%)、”80時間超の労働者のいた事業所の割合”は2.5%(H30年は7%)で、いずれもH30年調査より大きく減少しています。働き方改革の効果なのか、コロナ状況で仕事が減ったためなのかは不明ですが、労働時間の減少がストレス状況の改善につながったことは間違いないでしょう。

全体良ければ全て良し!でしょうか?実は、詳細に見ると気になることがいくつかあります。

“強いストレスとなっていると感じている事柄”の変化

本調査では、強いストレスとなっていると感じている人が、どのようなことにストレスを感じるのか(ストレスの要因)、3つまでの複数回答可能として調べています。

ストレスとなる事柄の上位の順位はこれまでほぼ変わらず、1位が仕事の量と質、2位が仕事の失敗、責任の発生等、3位が対人関係です。今回もそうでした。

多くの項目ではH30年と比べて数値が低下していますが、気になるのは増加した以下の項目です。

・顧客、取引先等からのクレームH30年13.1%→令和2年18.9%

・雇用の安定性 H30年13.9%→令和2年15.0%

・仕事の失敗、責任の発生等 H30年34%→令和2年35%

とりわけ顧客、取引先等からのクレームをストレスとなる事柄とした人は急増しました。コロナ感染不安や数々の行動制限、一部商品・部品の欠品などに伴う一時的な品薄、大幅な計画変更などが背景なのではないかと思います。

気をつけよう50代

本調査では、年代別データが掲載されています。20代から60代以上の各年代においてストレスが改善している中、唯一50代だけは強いストレスとなっていると感じる人がH30年調査に比べて増加しました(H30年57%→令和2年58.3%)。

50代がストレスとなる事柄として挙げている中で特徴的なのは、

①顧客、取引先等からのクレームが平成30年14.8%→令和2年22.1%と急増

②仕事の量や質が平成30年61.5%→令和2年62.9%に増加

何故50代だけがこの2年間でストレス状況がむしろ悪化したのかは不明ですが、以下の要因を推察します。

①コロナ禍に伴う様々な緊急対応で陣頭指揮に当たって業務多忙

②リモートワークなど働き方の多様性を背景に部下や顧客も含めた部門間、関係者間調整の複雑化、困難化

③ウェブ会議や様々なツールの活用など、求められるITスキル、仕事の進め方、コミュニケーション等が急速に、大きく変わったことへの適応の困難

令和2年10月調査結果ですので、コロナ禍が長期化するなかで新たに見える傾向も今後明らかとなるでしょう。引き続き要注目の調査です。

今般ご紹介した調査は職業生活に関するものです。コロナ禍に伴いプライベートのストレスも高じています。仕事とプライベート、双方からもたらされるストレスを注意深く観察しながらストレスマネジメントしていきましょう。