在宅勤務となって仕事のメリハリがつきにくくなったというお話をよく伺います。今回は、文字にしてみるとちょっと不思議な「メリハリ」について考えてみましょう。

「メリハリ」とは

メリハリは、邦楽用語として尺八の低い音を「減り(めり)」、高い音を「上り・甲(かり)」と呼んだことに由来します。近世頃より「かり」に代わって「張り」が使われるようになり、「メリハリ」となりました。物事の強弱や緩急をはっきりつけることを意味します。

「メリハリつけて」というフレーズ、だらだら過ごしている人に対して、あるいはそうした自分に対して使われることが多い気がします。常に「張って」いる人に「メリハリつけて(ゆっくりしよう)」というのはあまり聞かないでしょう。

「メリ」の苦しみ

「メリ」は緩んだ状態で、人からみると「緩んでいる」、「だらだらしている」、「手を抜いている」と見えるのかもしれません。でも、「やらなきゃ」と思いつつも行動に移せないことに苦しんでいる人もいます。はたからみると「緩んでいる」とみえるのに、本人の気持ちは決して緩んでいない、それが、「メリ」状態にある人の苦しみです。

「やらなきゃ」「やらなきゃ」という考えが続くことが苦しくて、逃れるために携帯やゲームをして過ごしますが、楽しんでやっているわけではなく、結果として「無駄に時間を過ごした」と自分を責めることもあります。

「メリ」を大いにリフレッシュできる人は、おそらく「ハリ」に向かうエネルギーを充電できるのですが、このように「メリ」で心を消耗している方は「ハリ」に向かえないのです。

「メリ」で心を消耗しないために

メリハリがつけられないことで困っている方のお話を伺っていくと、物事に対する自分の考え方が自分を苦しめ、行動を委縮させている場合があります。

①やるからには完璧なものができなければいけない。

②良い成績(成果)が出せないことがわかっているのなら、始める意味がない。

③本当は困っていて誰かに助けを求めたいが、そんなこともできないの?知らないの?と言われることを恐れて何も言えない。そのため時間だけが過ぎていく。

上記の例のような考え方に苦しんでいる方は、その考えを緩めてみましょう。結果は気にせず出来るところを取り組む、質問は分からないことを明確にすることが目的なので相手の態度は気にしない、などです。

自分のエネルギーを自分で妨げることなく発揮していけば、やがて自分らしいパフォーマンスができるものです。

あなたらしい”メリハリのつけ方”でよいのです。“メリハリのついた生活”という漠然としたイメージにとらわれずに過ごしていきましょう。