小池都知事が過労による静養を経て漸くリモートワークに復帰しましたが、大変憔悴した様子です。

コロナ対策とオリンピック対応という、様々な場面で矛盾する問題を同時に解決していく難しさを感じながら懸命にご自身の任務を全うなさろうとしておられる姿、私は素晴らしいという思いよりも、燃え尽き症候群に陥らないか、心配しています。

燃え尽き症候群とは

燃え尽き症候群は、強い使命感や責任感を持って仕事に励んでいた人が、ある時を境に、火が消えるように急に仕事への情熱や意欲を失ってしまう状態をいいます。バーンアウトとも呼ばれます。

エネルギッシュで高い理想に向かって集中して頑張る性格傾向に多いと言われ、1970年代、医療従事者、教師など対人援助業務に就く方について注目され、現代では様々な職種の方にみられています。

過労と燃え尽き症候群の違い

過労は「身心を損ねるほど働き過ぎて疲れがたまること」と定義されます。燃え尽き症候群は、過労に加えて精神的なダメージが加わり、気持ちのエネルギーが枯渇してしまう点に特徴があります。

「これだけ頑張ったのに達成感や見返りが乏しい」、「目標に向かって取り組んできたのに、新たな目標が見つからない」など、理想と現実がかけ離れたように見えることが燃え尽きのきっかけとなることが多くみられます。

過労は休養によってエネルギーの回復が速やかである一方、燃え尽き症候群は「情緒的な枯渇」が特徴なので、回復に時間を要します。仕事と自分を一体ととらえて頑張ってきた方にとっては、仕事で充実感を得られなくなることは自分の人生の大事な部分を失うことになり、その喪失感は大きなものなのです。

小池都知事は答えの見えない難題に懸命に取り組んでおられますが、過労に加えて「頑張ったのに評価されない」、「オリンピックが思った成果をみない」などが引き金となって、燃え尽き症候群に陥ることはないだろうかと心配になります。

燃え尽き症候群の予防

燃え尽き症候群の予防には、疲労のコントロールとモチベーションコントロールが鍵となると思います。長期にわたるコロナ禍の影響も踏まえて考えましょう。

①疲労のコントロール

やりがいを持って働いている時は際限なく働けるように感じられ、またそのことに喜びを感じるものですが、上手に休んだり、気晴らしを入れるスキルが必要です。

疲労の原因は仕事のストレスだけでなく、プライベートのストレスにもあります。コロナ禍で日々の感染予防自体が意識的、無意識的に緊張を与えますし、友人と会ったり気晴らしする機会が減って疲労から解放されにくい状況が続いています。

コロナ禍では、私たちは疲れ易いのです。「仕事のオフ」を十分に味わえるような、ご自分なりのひと工夫を考えてみましょう。昼休みは外の空気を吸いに出かけるというのでもいいし、手軽に出来る「オフ」が必要です。

②モチベーションコントロール

「頑張った見返りを求める」、「常に明確な目標を持つ」ことも、コロナ禍におけるモチベーションの持ち方として検討の余地があるかもしれません。

人との接触やコミュニケーションが多く持てる時は、人の振る舞いから自分への評価を確かめるやり方がありましたし、社会の方向性が明確であれば目標も持ちやすいものです。しかし、コロナ禍で人との接触やコミュニケーションが急速に減り、先行きが見えにくい状況となりました。

周囲の環境に振り回されないモチベーションのためには、「この仕事が面白い」、「成長につながる」など自分の内面とつながる観点を探してみるのがよいでしょう。

危機は新しい自分の発見の機会ともなります。ちょっと休んで考えてみましょう。