心理学でレジリエンスとは、「困難からの精神的回復力」を表します。

昨年11月に出発した宇宙飛行士の野口聡一さんが、コロナ禍からの回復を願って宇宙船に「レジリエンス」と名付けたことでも話題となりましたね。

「ストレス」も「レジリエンス」も物理学用語ですが、ストレスが「外力からの歪み」を意味するのに対して、レジリエンスは歪みを跳ねのける力であり、対になっている言葉です。

レジリエンスが注目されて来た背景

レジリエンスは、1970年代、子供の研究を通じて見出された概念です。非常に過酷な家庭環境にありながら、優れた成長を見せている子供たちの一群に着目し、その要因について研究されたのです。その後成人も含めた研究に発展し、特に大きな災害や惨事の折に、その後の精神的回復を促す力として注目されました。

2000年以降ではアメリカにおける2001年の同時多発テロ、2011年の東日本大震災がレジリエンスという考え方の発展のきっかけとなりました。間違いなくコロナ禍からの回復においても重要性を増すでしょう。

一方、大災害や惨事ばかりでなく、ビジネスにおいても、特にこの数年、逆境に関わらず成長する力としてレジリエンスを高めることに関心が集まっています。

レジリエンスを高めるには

「跳ね返す力」と聞くと、どんなことをイメージしますか?多くの方は、自分がへこんでしまう前に困難を処理し、果敢に振る舞い続けることを想像するでしょう。しかし、レジリエンスは、困難によって自分が大きく苦しんだり、へこんだりするところから始まります。

自分が苦しかった時期を振り返ってみると、その期間が決して短くないことにすぐ気づくでしょう。数か月、半年、1年ということもざらです。受けた衝撃が大きければ大きいほど、へこみは大きく、回復に向かうまでに時間が必要なのです。

大事なことは、やがてこの状況が改善することを信じていけること、そのために自分を信じて、行動を続けることと考えられています。また、回復プロセスは自分固有のプロセスですので、人と比べて焦らないことも大切です。

アメリカのニュースから

アメリカ大統領の就任式前後に当たり、アメリカのニュースを見ていますと、このコロナ禍からのレジリエンスだけでなく、社会の分断という危機からのレジリエンスというフレーズを耳にします。

そして、新大統領へのほめ言葉として、逆境においても楽観的な見方を失わず、建設的な考えをもって切り拓く、レジリエンスの高い人という紹介がされていました(CNN放送)。

バイデン氏は、前妻と当時1歳だった子供を交通事故で失い、もう1人の子供も数年前に40代で脳腫瘍のため亡くなりました。そうした大きな喪失の中でも将来に希望を見出し、現在の妻との出会いや支えを得て大統領となられます。個人としての苦しみの経験が重なっているからこそ、レジリエンスを高めることにつながったのかもしれません。

辛い時期の中でも将来はきっと良いものになるだろうという楽観性や、上手に人からサポートを得る力は、レジリエンスを高めることにつながります。

自分の力を信じていきましょう。