先週、新宿御苑の菊花壇展に行ってきました。

年々細くなってしまった菊の株を丈夫にしようと、YouTubeの情報に従った手入れしたのが大失敗、花付きも悪く、がっくりしていたところでしたが、古くから各地域に伝わる伝統の菊を公園内のあちらこちらでゆっくりと見ることができ、美しい樹々の紅葉と共に大いに癒されました。

特に興味深かったのは、肥後菊の花壇です。熊本藩主細川重賢(しげかた)は肥後菊の栽培を武士の精神修養として位置付けたそうです。

肥後菊の伝統栽培

肥後菊は1本で植えるものではなく、全体の調和を大切にすることが特徴です。前、中、後の3列、高さは低、中、高の3種類、色は紅、白、黄の3種類、花弁は平弁、管弁の2種類あり、花色と花弁の異なる6品種を最低18種類揃えることが肥後花壇の最低条件だそうです。

そして花だけでなく、茎や葉、植え込まれた全体のバランスが評価されます。

種類も性質も異なる菊を上手に育てることが、リーダーとしてメンバーの個性を尊重しながら調和を図る資質の向上につながると考えられたそうです。

後に肥後菊の栽培法の虎の巻が出たそうですが、その栽培は大変難しく、18本が見事に揃っての評価の時期は武士の皆さん、胃の痛む思いだったろうと思います。これらの事から肥後菊の栽培が武士の修行として広く認知されたということです。

参考)熊本県公式観光サイト

現代に思うこと

武士たちは、話のできない菊の様子を日々観察し、日当たりや温度、水やりなど、少しでも成長しやすい環境を整えるために心を砕いていたことでしょう。

マネジャーの方からは、リモートワークとなり、部下との対話の機会が減ってマネジメントをしにくくなったの声をよく聞くようになりました。

対話の頻度が減ったとしても、メンバーの個性や育成段階を踏まえた新たな業務や役割を与える、適切なフィードバックとサポートの工夫、風通しの良い職場づくりなど部下の育成環境を整える方法は様々です。様々な制約が大きいからこそ、これまで何気なく行ってきた言動を振り返り、磨きをかけるチャンスにもなるでしょう。

業務に直接関係のない仕事を部下に与えることは、現代ではパワハラとみなされかねないので、現代であれば武士に菊の栽培を命じることは難しいでしょう。この伝統の栽培法が伝授されることによって、今私たちがその美しさを享受できるのは幸せなことです。