この暑さに多くの人が海水浴を楽しんでいますが、密集を避けるため、海開きが中止されてライフセーバーがいない海岸が多く、水の事故の多さが話題となっています。

ライフセーバーはこれまで広い視野で遊泳者を観察し、危険を未然に防止してきました。

職場のメンタルヘルスについて考えてみると、マネジャーはライフセーバーと同様、日頃からビジネス「海(かい)」の荒波にもまれる部下を観察し、気がかりな時にはこまめに声をかけてメンタル不調を未然に防止してきました。

しかし、こうしたラインによるケア(ラインケア)は「職場」というリアルな「場」を共に過ごすからこそよく機能してきたと思います。在宅勤務が進むことのひとつの心配は、部下の様子を観察できる人が不在となり、誰も気づかぬままメンタル不調に陥る社員の増加です。

今回は、コロナ禍で制約を受ける中でのラインケアについて考えてみたいと思います。

在宅勤務におけるラインケアの難しさ

これまでマネジャーたちは日頃の観察の中で、次のような部下の異変を素早く感知し、メンタル不調の早期発見と対処に貢献してきました。

・遅刻や早退が増える

・朝辛そうだ

・最近疲れた様子がある

・急に痩せてきた

・会話が減った

・表情が乏しくなった

・ミスが増えた

・生産性が下がっている

これらを見ると観察対象の多くが視覚情報であったことがよくわかります。

在宅勤務はこれらの情報の収集を難しくしますので、メンタル不調のサインの把握は難しくなります。

ラインケアのこれから

こまめに部下をケアしてこられたマネジャーの皆様は、在宅勤務の始まりと共に部下の様子が見えなくなったことには不安をお感じの事と思います。

在宅勤務を選択している企業によってコミュニケーションの取り方は異なると思いますが、以下のような工夫はできそうです。

①定期的なウェブ上の打ち合わせの様子

②文字によるコミュニケーションの質(レスポンスの頻度・速さや内容など)

③集中力や判断力の低下を背景としたミスや生産性低下

ウェブ上の画像のやり取りを制限する一方、SNSやメールなど文字によるコミュニケーションを以前より活発に始めた企業もあることでしょう。

しゃべるより、書く方が得意という方にとっては、かえって人の顔色を気にせず書きやすいという利点はあるかもしれません。

文章の裏にある本当の思いまでくみ取ることは難しいものですが、電話やウェブで会話したくても、顔が見えなくて声をかけるタイミングに困りがちですので、気軽に利用できるこうしたコミュニケーションツールも有効な手立てとなります。

突然在宅勤務で自己管理力を高く発揮するよう促され、大海原に放り出されているように感じている社員も多くいることでしょう。

私たちは「どこかで誰かが自分のことを見ていてくれる」と思えるから頑張れるものです。在宅勤務だからこそ、マネジャーの皆様がライフセーバーとしていつでもいてくれるという安心感が今後益々重要となるでしょう。

様々な制約は長く続きそうですが、その中でできそうなことに取り組んでいきましょう。