春の環境変化から少し時間がたち、新しい同僚やお客様からみて自分がどんな印象なのか、ちょっと気になる季節ではないでしょうか。

心理学で「印象」とは、“容貌、声、身振り、風評など他者についての限られた情報を手がかりとして、その人物の全体的なパーソナリティを推論すること”です(心理学辞典 有斐閣)。

印象はどうやって形成される?

印象がどのようにして形成されるのか、古典的な研究で有名なのはアッシュです。アッシュの実験研究によると、「知的な、器用な、勤勉な、温かな、決断力のある、実際的な、用心深い」という人物の印象と、「知的な、器用な、勤勉な、冷たい、決断力のある、実際的な、用心深い」という人物の印象とは、違いはわずか一つの表現なのに大きく異なっていました。

またアッシュは、上の「温かな-冷たい」、というのに変えて「丁寧な-無愛想な」で印象形成の違いを調べましたが、これは「温かな-冷たい」ほど大きな違いがありませんでした。こうしたことから、人の印象全体に大きな影響を与える性格特性があると考え、それを中心特性、印象への影響が弱い性格特性を周辺特性と呼びました。

中心特性には「温かな」、というほかに「親切な」、「正直な」、「親しみやすい」があり、これらは印象を作るうえでとても重要な性格特性です。一方周辺特性は「丁寧な」というほかに、「知的な」、「器用な」、「勤勉な」、「決断力のある」、「実際的な」、「用心深い」などがあり、パーソナリティの周辺を構成する性格特性です。

丁度新しいお客様や同僚との関係ができ始めている頃と思いますが、「親切で正直、親しみやすさがあり、温かい」、こんな中心特性の持ち主は好印象間違いありません。

 玉に瑕

ところで玉に瑕(きず)とは、沢山優れたものがある中でちょっとだけ欠点があるということわざで、概ね好印象の言葉として用いられますね。

アッシュの研究によると、沢山優れた性格特性がある中で、ネガティブな中心特性が含まれると悪い印象が強まることがわかりました。例えばどらえもんのしずかちゃんが「聡明で素直、かわいいけれど冷たいのが玉に瑕」としましょう。・・・ネガティブな中心特性が混じると悪い印象が強まりますね。ジャイアンが「怒りっぽく、不器用で、ルーズだけれど親切」とすると、これだけネガティブ特性が並んでいるのにポジティブな中心特性が入ることで、不思議なことに印象はさほど悪くなりません。

「玉に瑕」といえど、瑕の中身が全体の印象を大きく左右するというわけです。

さあ、皆さんはご自身の印象をどのように他者にもってもらいたいでしょうか。ビジネス上はもちろん業務知識やスキル、決断力や成果が問われますが、ご自身の人柄は印象形成の大きな資産となることをお忘れなく!