ホメオスタシスとは“生物が何か変化が起きた時に内部環境を一定に保ち続けようとする傾向”のことで、生理学者のキヤノンが「人体の知恵」として1930年代に提唱した概念です。

連日の猛暑で汗対策にひと苦労という方も大勢おられると思いますが、汗をホメオスタシスの観点から見直してみましょう。

ホメオスタシスの役割と代表例

大げさな言い方ですが、私たちが健康を維持していけるのもホメオスタシスのお蔭です。体内の環境に乱れが生じても、体内環境を元に戻そうとホルモン系や自律神経系の調節が常に行われているのです。

ホメオスタシスの代表例は体温、血流、血糖値です。

体温の調節:暑い時や体温が上がった時、手のひらや足の裏を除く体表面に汗が出て体の熱を冷やします。寒い時は鳥肌が立ち、体内の熱の拡散を抑制します。

血流の調節:運動した時は心臓の拍動が速くなって心臓から送り出す血液の量が増えます。一方休んでいる時は心臓の拍動は遅くなり、血液の量が減ります。

血糖値の調節:食事の後は血糖値が上昇し、それに応じて血糖値を減少させるインシュリンが分泌されます。

汗は身近な健康のバロメーター

血流や血糖値って自覚するのは難しいもの。でも、汗はすぐ気づきます。

働く人にとって汗はやっかいものと思われがちですが、暑い夏に汗がかけるのはホメオスタシスが健全に働いている証拠です。

注意したい汗

けれども、汗の中でも、次のように局所に集中した汗やあまりにも多い汗が出る場合は注意が必要です。

①精神性汗:「冷や汗」、「脂汗」、「手に汗握る」と表現される汗は、緊張や恐怖などの強いストレスからくる自律神経の乱れによるものです。手のひらや足の裏にどっと出る汗が典型例で、手の汗のために触る書類がぐっしょりしてしまうケースもあります。

②多汗:何らかの疾患やホルモンバランスの問題から多汗になる場合があります。代表的な疾患は甲状腺機能亢進症、更年期障害です。

こうした場合は医療機関を受診することが必要です。

いい汗かいて健康増進

エアコンの普及に伴い私たちは汗をかきにくい体質となり、そのため汗腺が衰えて、べたついた、臭いを伴う汗をかきやすくなったといわれています。

日焼けのケアと一緒に、汗の出方、かき方にも少しの関心を払ってみましょう。適度な運動やゆったりとした入浴でいい汗をかく習慣が健康増進につながります。

まだまだ暑い毎日です。室内外の気温差も体には負担です。体調管理に気を付けてお過ごしくださいませ。