
ウツボと縄張り
混み合った電車なのに、隣の席に自分の荷物を置いて周りに人が立っていても知らん顔、満席の講演会なのに最後まで隣の席の荷物をどけず、座れない人がいても知らん顔、そんな方に遭遇したこと、ありませんか?
パーソナルスペースとは
パーソナルスペースとは、他人が近づくと不快に感じる空間のことです。平たく言えば縄張りで、自分を中心とした大きなシャボン玉とイメージいただくと良いと思います。
先の例の方々は“独りよがりで非常識な人”と思うと不快になりますが、「ああ、この方、パーソナルスペースが広いんだな」と理解すれば、その方のありようが少し想像出来ます。
一般的には内向的な人は外交的な人よりパーソナルスペースが広く(入ってほしくない領域が大きい)、また男性は女性よりパーソナルスペースが広いと言われています。
また、動物の縄張りと異なり、人のパーソナルスペースは自分中心に持ち運ぶことができて、状況によって広さも柔軟に変わるものです。
例えば混んでいるエリアでは人のパーソナルスペースは狭くなるので、満員電車や込み合うエスカレーターでは大勢が近接することができます。一方、人の少ないエリアではパーソナルスペースは広くなるので、広々した場なのに知らない人が近づいてくると、やや遠くでも警戒することがあるでしょう。
私が見かけた方々は、パーソナルスペースが広く、また、状況によって柔軟に変化させることが難しい方たちと推察することができます。このように冷静に分析すると、不快感や嫌悪感という負の感情を少し緩和することができます。
パーソナルスペースの4つのゾーン
アメリカの文化人類学者のエドワード・ホールは次のように大別しました。
密接距離 | 家族や恋人など、ごく親しい人 | ゼロー45cm |
個体距離 | 相手の表情が読み取れる、友人や会社の同僚 | 45-120cm |
社会距離 | 相手に手は届きづらいが会話は出来る、 知らない人同士や商談の距離 | 120-350cm |
公共距離 | 複数の相手が見渡せる距離、講演会など | 350‐700cm |
ビジネスにおけるパーソナルスペース
さて、皆さんのビジネスでは上司や同僚、あるいはお客様とのパーソナルスペースはどうでしょうか?
新入社員の皆様にとっては、育成担当者との距離は「個体距離」の範囲にあるでしょうか? 日々わからないことだらけですから、頼りにしたい先輩は近く座っていただきたいものです。
さて、上司はどうでしょう?120センチより遠いと「社会距離」となり、ほっとする反面、いざというとき相談のタイミングがつかみにくい、ということがあるのではないでしょうか?
さすがに上司が「公共距離」にある方は多くはないと思いますが、もしそうだとすると、こまめに 打ち合わせを持つなど、信頼関係を深める方法を工夫する必要があるでしょう。
営業マンの皆様は、お客様の顔ぶれと、座り方を思い出していただくと、その距離感と関係性の深さというのが概ねイメージできるでしょう。
個人差やカルチャーの違いによって適切な距離感というのは変わってくるものですが、半世紀以上前に提示されたホールの研究を上回るものはなく、概ね妥当と考えらえています。一つの目安として活用なさってみてください。