平成最後の“今年の漢字”は「災」でしたね。西日本豪雨や北海道地震、記録的猛暑、台風などによる甚大な自然災害のほか、スポーツ界、ビジネス界、大学などでパワハラや決裁文書の改ざん、不正融資、不正入試などの人災も話題になったということがその理由とのことです。
セクハラ対策は平成の30年をかけて進化、パワハラ対策のスピードは?
都道府県の労働相談窓口に寄せられるいじめ・嫌がらせに関する相談が急増する実態がありながら、セクハラと違ってこれまで特別な法律がなかったパワハラですが、漸く来年には法案が出される見通しとなりました。
翻ってセクハラ法制化の歴史を見ると、セクハラを理由とした国内初の民事裁判が起きたのが平成元年でした。その後、平成9年の男女雇用機会均等法の改正によって女性に対するセクハラ規定が盛り込まれ、その10年後の平成19年にセクハラ規定を男性にも適応するとの改正が行われました。そしてさらに10年後の平成29年、育児・介護休業法と男女雇用機会均等法の改正が行われ、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とした不利益な取り扱いの禁止も盛り込まれることになりました。
セクハラについては、平成の30年をかけて、ほぼ10年毎に少しずつ進展してきたといえますね。パワハラは平成後の新しい時代に法制化の第一歩を踏み出しますが、どのように進展していくのでしょうか・・・このご時世、ぐっとスピード感をアップして変わってくれればよいのですが・・・
口は災いの元?
パワハラ研修を担当させていただく中で、マネジャーの皆様から、パワハラと言われることが怖くて声をかけることが難しい、指導しにくくなった、という声をよく伺います。「口は災いの元」とは、“不用意な発言が自分自身に災いを招く結果になるので十分慎むよう”との意味ですが、パワハラと言われることを恐れて、職場のコミュニケーションが更に減ってしまうことは大きな懸念です。
パワハラは、上(上司や先輩)から下(部下や後輩)に対して行われるものというイメージが強いと思いますが、長年同じ業務を担当している部下が業務上・人間関係上の優位性を背景として、新たに着任してきた上司を無視し続ける、といったケースもあり、地位の上下に留まらず、様々な関係性において起こるものです。
パワハラ対策の法制化をきっかけに、職場を支える一人一人が、どれだけ自分事として、自分の人間関係やコミュニケーションの取り方について真摯に振り返り、より良いものとするよう考えていけるかが、パワハラ防止の鍵となるでしょう。
来年4月施行の働き方改革関連法案とやがて生まれるパワハラ対策法案が、働きやすい職場環境の改善や生産性向上のための両輪となっていくことを大いに期待しています。