お盆で日ごろの電車の混雑もだいぶ緩和されていますが、先日、駆け込み乗車のことがニュースで話題になっていましたね。今回ちょっと長くなったので、2回に分けてお届けします。
駆け込み乗車をする人の心理
JR東日本は駆け込み乗車を防ぐ方法として、発車メロディを流すやり方を止める実験を始めたそうです。発車メロディがホーム全体に鳴り響くことが駆け込み乗車を誘発するのではないかという考え方のようです。
どうして「駆け込み乗車」するのでしょうか?これは心理の専門家にとっては色々な連想が思い浮かぶとても面白いテーマです!
ホームにいる人々全体を集団とみて集団心理から考えてみても面白そうですが、私は個人の心理療法が専門ですので“出発間際の電車に飛び乗ろうとする人”について思い浮かぶことを述べてみます。
- そこに良いものがある(はず)、手に入れたい、という強い思いのAさん~良いものが目の前を去っていくのは耐え難いと感じやすいのかもしれません。
- 困難と思えることをやってのける達成感があるというBさん~日頃なかなか達成感を味わえないので、ささやかな達成感で補おうという気持ちがあるかもしれません。
- 自分が乗り込むために人を待たせているという優越感があるというCさん~知り合いや同僚の間ではコンプレックスを感じやすいので、自分のために電車や人を待たせているという優越感を味わいたい気持ちがあるのかもしれません。
- 警告に対する生物的な防衛として、対象に向かっていくことを選ぶDさん~生物としての身の危険を察知した時、人は対象に向かっていくか(闘争)、回避するかいずれかの反応を選びます。Dさんは闘争を選ぶタイプなのでしょう(とても危険ですが)。
- 長年にわたって“ベルが鳴れば駆け込む“という条件反射で体が動いてしまうEさん~これは学習過程の中の「古典的条件づけ」に該当しそうです。
- 「ドアが閉まります」といっても実際にはすぐに閉まらないので危険な知らせに慣れてしまったFさん~刺激が長い間繰り返されることでその刺激に鈍感になる現象(馴化<じゅんか>)です。
- 間に合うかどうかという時間の見積もりや行動の結果の予測が苦手なGさん~時間感覚や空間認識がもともと苦手なために、限られた時間や空間の中での行動の統制がうまくいかないのかもしれません。
一つの行為に至る心の動きは人によって、また状況によって千差万別ですし、専門家が集まれば山のように解釈が出そうです。
駆け込み乗車の心理は、エレベーターでドアが閉まりかけているのに乗り込む心理にも当てはまるように思います。とても危険ですし、他の人に不快感や迷惑をかける行為です。
ホーム全体に響く音から周辺だけに届く小さな音に変えた場合、例えば警告=闘争型のDさんや条件反射型のEさんには有効かもしれませんね。他の方々にはどうなのでしょうか・・・どれほどの効果があるのかJR東日本の実験結果が楽しみです。