歴史的な会談と表情
歴史的な会談のテレビ中継、皆さんも“あの方”の表情にくぎ付けだったのではないでしょうか?
ここで“あの方”とさせていただきますのは、第33回で述べましたハイコンテクスト・コミュニケーション(共有する情報を豊富に持つ場合に曖昧な表現を用いる)の一例です。
さて、皆さんはあの報道で顔のどこに注目しましたか?
顔から読み取る感情
顔から読み取る感情については様々な実験があります。例えば、ある感情を表す顔写真の額、眉、目、鼻、口を部分的に切り取り、別の異なる感情を表す顔写真に貼って合成写真として調べたもの、目と口の形からなる顔アイコンでどのように表情を読み取るかを調査したもの、また文化の違いに関するものなどもあるようです。
私、“あの方”の口元の表情よりも、目の表情を懸命に追っかけておりましたが、東アジア系の人は顔の口元よりも目元に基づいて感情を判断しようとする傾向があるようです。「目は口ほどにものをいう」、「目を細める」、「目を丸くする」、「目をつりあげる」など、日常の日本語の中にも感情を表す言葉として目の動きが沢山使われていますね。
顔の表情が矛盾に満ちた場合は
顔のそれぞれの部分が同じ感情を表してくれればわかりやすいですが、ばらばらだったらどうでしょう。読み取りはとても困難になります。
統一的な研究の見解というのはないようですが、”人が感情を判断する際に重視する顔の部位が、判断する感情によって違っている”ことは多くの研究で共通しているようです。
例えば、怒りや恐怖、驚きや悲しみは、顔の上部(額、眉、目)の影響を多く受け、喜びや嫌悪は顔の下部(口、鼻、頬)の影響を多く受けるという結果が代表的なものです。また、目は、表情が表している感情のニュアンスを変える(強調したり、やわらげたり)働きがあるという研究もあります。
表情を読み取る力の低下
日頃のコミュニケーションの手段がメールやSNSとなり、顔アイコンを多用する日常となりました。顔アイコンで自分の感情を表現するというやり方に馴染んでしまいますと、対面での相手の表情から僅かな心の変化を推察したり、気持ちを汲んだりする能力が益々衰えてしまうのではないかと私は危惧しています。
仕事の性質によっては、相手に自分の感情を読み取られない方が良い場合もあるでしょうし、逆に自分の思いを印象付ける必要がある場合もあるでしょう。顔の表情は動かさない習慣が長くなると表情筋が衰えてしまうといわれています。健康づくりと言われて久しいですけれど、顔の表情も意識して、こっそり、鍛えていきましょう!