副業・兼業の促進
2012年の総務省就業構造基本調査によると、副業を希望する労働者は約368万人、全就業者の5.7%であり、その人数、比率とも年々増加の傾向にあります。こうした情勢を受けて厚生労働省は柔軟な働き方に関する検討会を行い、その内容を踏まえて本年1月、副業・兼業の促進に対するガイドラインを作成しています。
副業・兼業を容認している企業は2割強(リクルートキャリア、2017年2月調査)とのことですが、この先増加していくことでしょう。
今回は副業・兼業というキャリアについて考えてみます。
副業・兼業のメリット
厚生労働省のガイドラインによると、副業・兼業の労働者にとってのメリットは以下のとおりです。
① 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、 労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
② 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求する ことができる。
③ 所得が増加する。
④ 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。
バウンダリレス・キャリア
アメリカの新しいキャリア理論の中にバウンダリレス・キャリアという概念があります(Arthur and Rousseau 1996)。
バウンダリレス・キャリアは伝統的な組織内キャリアとは対照的なもので、一つの企業や職務といった境界(バウンダリー)を超えて新しい経験やスキル、ノウハウを培い、自律的に成長するキャリアです。典型的なのがシリコン・バレーで複数の雇用者(異なる企業・産業)間を移動しながらキャリア形成するスタイルです。
アメリカではもともと転職が頻回で、一般的な人で一つのポジションに4年半程度、専門的な人でも最大6年というサイクルといわれており、組織に頼らず、自律的にキャリアを形成するという考えが長年に亘って浸透しています。
日本流バウンダリレス・キャリア?
一方、日本ではキャリア形成という考え方自身は随分と広まってきましたが、実際には人事異動によるジョブローテーションを中心とした組織内キャリア形成が今なお主流です。
本業を組織内キャリアに起きつつ副業・兼業で組織にとらわれない自律的なキャリアを切り開くというのは日本流バウンダリレス・キャリアに当たるかもしれません。
バウンダリレス・キャリアの成功のカギ
バウンダリレス・キャリアを成功させるのに重要なことが3つあるといわれています。
①knowing why:自分のアイデンティティや価値観、心理的満足や追及したいことなどと照らして、何故その仕事を志向するのかをわかっていること
②knowing how:専門的能力や知識、これまで培ってきた経験をどのように活かすのかをわかっていること
③knowing whom:自分の保有する人的ネットワークは十分か、どういう人的ネットワークを持つのかをわかっていること
もちろん、小遣い稼ぎの手段として副業をみている方もおられると思いますが、自分のより優れたキャリア形成につなげたい方にはこれらは重要なポイントとなるでしょう。
活躍の機会が多様化すればするほど、自分はどうしたいのか、自分とは・・・と自分を巡る考察が必要となります。自律への備え、大切です。