例年より随分と早いお花見の季節が参りました。

皆さん、どんな楽しみ方、なさっていますか? 一人でふらりと楽しむのも良し、気心知れた仲間と楽しむのもよし、これほどあまねく広く、人々の心をひきつける花というのは他にはないものです。

共に眺めること(共視)のこころの作用

お花見が特別なのは、さくらの魅力ばかりでなく、さくらを共に見る他者とのこころの交流にあると思います。

「戦争を知らない子供たち」、「あの素晴らしい愛をもう一度」などの音楽活動の後、精神科医、精神分析家としても国内外で大変活躍してこられた北山修先生が提示する概念に”共視”があります。

北山修先生は浮世絵の母子像を分析し、日本では古くから、花火やしゃぼん玉といった一つの対象を母子が共に眺める構図が非常に多いと指摘しました。

”ほら見てごらん”と母親に促されて共に眺める幼な子は、母親の視線やその意味を追いかけ、その場の情緒的、身体的な交流を通じて少しずつ言葉や思考を育くむと考えられています。

お花見には、さくらという対象を見ている、互いの、あるいはそこに居合わせる人々の、情緒のゆるやかな交流があり、そこに愛情や気遣い、安心や喜びといった、ゆったりとした心地よさがあるように思います。

今年は卒業式に見頃が重なりました。異動やお子様の進学の時期でもあります。次のステップに向けてのはなむけとして、この光景を心に刻んでおきたいものです。