イギリスのEU離脱、アメリカにおけるトランプ政権の誕生、スペインのカタルーニャ独立住民投票など、それまで少数派と思われてきた人々が徐々に発言を増し、政治経済の流れが大きく変わってきています。
翻って皆さんの職場ではどうでしょうか。かつては当たり前であった残業に制限が加わって、残業を当然と思ってきた多数派が少数派になったり、育児休業や介護休業が取りやすくなったり、あれほど多かった喫煙者がいつの間にか少数派になっていたり、大きな変化を実感している方も多いのではないでしょうか。
モスコヴィッチによる少数派の研究
今から半世紀ほど前までは、集団に影響力を持つのは多数派だと考えられてきましたが、社会心理学者のモスコヴィッチは、少数派の中でも特に積極的な意思を持った人たちは社会や集団を変革させる影響力を持つと考えました。
そうした少数派は、多数派が知らない、あるいは予期しない情報を提示することができ、多数派の注目を集め、それらの情報が慎重に検討されて、少数派の一部、あるいはすべての意見が多数派に取り入れられるプロセスが生まれます。
多数派の人が多数派の影響を受けるのは、自分が集団から外れていないことを確認したいニーズによるもので、“表面的に人に合わせている”のに対し、少数派からの影響は、多数派の人の内面の考え方に新しい考えを呼び覚まし、新しい意見や考え方に向かわせるもので、より深い影響となります。
特に行動に一貫性があり、変わらない態度を持つ少数派の人ほど、多数派がその人の確信や信念を読み取って大きな影響を受けるとのことです。ただし、その後の研究では、あまりに頑固で融通がきかないことはむしろマイナスで、適度に柔軟で妥協ができる態度がより多数派に受け止められやすいと述べられています。また、集団内の多数派のリーダーが、少数派の意見を支援している時に、少数派による影響が大きくなるとのことです。
自分の考えや振る舞いが、他のメンバーと同じかという表面的なことにだけ気持ちを削がれているのでは、革新につながるようなアイデアは生まれません。大きな集団の中には必ず少数派の意見が埋もれており、リーダーとなる人には、そうした声に耳を傾け、慎重に吟味し、良いところを取り入れる、そしてそれを皆に周知する、そうした活躍が期待されるところです。
その時代の多数派の意見に飲み込まれず、少数派の目を保ってより良い組織や社会のためになるような活動をしていきたいものです。