9月10日はWHOが定めた世界自殺予防デーで、日本でも9月10日~16日は自殺予防週間です。WHOが発表した今年のメッセージの要約をお伝えします。

 WHO 世界自殺予防デー・メッセージ

https://www.iasp.info/wspd/pdf/2017/2017_wspd_brochure.pdf

(上記英文から抜粋、要約)

毎年80万人以上が自殺で亡くなり、自殺未遂を図る方はその25倍いる。

どの方も地域の一員である。ある方は地域とよく関わり、家族や友達、職場の同僚やスクールメイトとのネットワークを持ち、ある方は、あまり関わりを持たず、とても孤立している。どのような事情であれ、地域は傷つきやすい人たちをサポートする上で重要な役割を担う。そこで今年のテーマを〝Take a minute, change a life”とした。地域の一員として、我々は、苦しんでいるかもしれない人々に注意を払い、彼らの方法とペースでストーリーを語れるよう促す責任がある。優しい言葉をかけ、判断しない(non-judgmental)態度で耳を傾けることで全てを変えることができる。

“Taking a minute can change a life. 時間を割くことで一人の人生を変えることができる”

自殺未遂をした人々から学ぶことは、他者からの言葉や行為が如何に重要かということである。自分の命を取り上げる以外に手段がないと苦しむ人たちは、誰かに介入して止めてもらいたい気持ちがあり、また、誰かにこの絶望を感じ取ってもらいたい、大丈夫かと聞いてもらいたいという気持ちをもっている。しかし悲しいことに、誰もそうしてくれないことが多い。それが全く見知らぬ人かもしれないし、親しい家族や友達かも知れないが、誰かに手を差し伸べるための時間を割くことで彼らの人生を変えることができる。

“No one has to have all the answers. 全ての答えを持っている必要はない“

誰かのことをとても心配している時でも、人々は介入することを嫌がる。この理由は沢山ある。例えば

  • どのような言葉をかければよいかがわからない
  • 対話することでより状況が悪くなるかもしれない

である。自殺の話題を切り出すことは難しく、また自殺について話すことが頭にインプットされて行動の引き金になると信じられているので、そのように感じることはもっともだ。しかし、エビデンスは異なる。思いやりや、判断しない態度で話を聴くことは状況を悪化させるよりも、悩みを減らす。

“Resources are available ”以下は英語のリソースの紹介のため割愛

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日本の自殺者数は平成15年の34,427人をピークに減少傾向にあるようですが(H28 21,897人)、人口10万人当たりの自殺者数は世界でワースト6位とのことです。

ご紹介したWHOのメッセージは自殺予防としての内容ですが、職場の同僚、家族、友人などで「最近元気がない様子で、大丈夫かな」と心配になる方への対応としても当てはまる内容です。うつ病についての知識は広まりつつありますが、苦しんでいると思う人が近くにいても、どう関わったらいいかがわからず、また自分が対応を誤って追い詰めてしまわないかと心配ばかりで何もできず、その間に本人の症状が悪化してしまうということもよくあります。

本稿ではnon-judgmentalを”判断しない”と訳しましたが、心理学では”無条件の”と訳されることもあります。ここは良いがここは間違い、など自分の価値観や考えで条件をつけるのでなく、無条件にその方の思いや考えを肯定することです。思いやりと判断しない態度、この2つを心がければ、相手に気持ちは十分伝わります。手を差し伸べてみてください。