マネジャーや育成担当者から、新入社員について、「まじめだが消極的」、「何でもすぐ聞いてきて自分で考えようとしない」といった声をしばしば伺います。

リクルートマネジメントソリューションズの2022年新入社員対象調査によると、“失敗を恐れずどんどん挑戦する”ことを大切にする人の割合は24.8%で、10年前に比べて4%低下したそうです。

また、日本能率協会マネジメントセンターが2021年、2022年の新入社員対象に行った意識調査によると、”失敗して汚点がつくくらいなら最初から手を出さない方が良い“という考えの人は27.3%でした。同調査では、特にZ世代が本格的に社会人となり始めた2020年以降、挑戦より失敗を回避する傾向が顕著になってきたと指摘しています。

「失敗を恐れずに挑戦してほしい」という入社式の経営者の熱いメッセージを今年の新入社員の方々はどう聞くのでしょうか・・・

失敗を回避する要因の一つとして、「不作為バイアス」という認知バイアスがあるといわれています。今回は不作為バイアスを手掛かりに、新入社員が失敗を恐れず挑戦していくためのヒントを考えてみたいと思います。

不作為バイアス

「掃除した方が良いと思うが、勝手に掃除して怒られるよりも何もしないで怒られた方がましと考え、何もしない」、これが不作為バイアスの例です。何かをして失敗するよりも何もしない方がましと考え、不作為(何もしないこと)を選択するバイアスのことです。

不作為バイアスの原因としては以下の二つがあるといわれています。

①不確実性の回避:挑戦して行動することが成功に結び付くとは限らない。その不確実性を回避するため。

②行動することの機会費用の過大な見積もり:挑戦したらよいとは思うが、それに伴う機会費用がとても大きく見えるため。

不確実性の高い時代であり、成長に苦しむ組織が増えていますので、不作為バイアスは働きやすいと思います。挑戦しても成功する見通しが立ちにくく(上記①)、仮に自分が成功しても全体収益の厳しさを理由に評価に結びつかない、目立つことで叩かれるリスクがある(上記②)となると、積極的に行動しようという気になりにくいのはもっともです。

加えて、新入社員は、学生時代までの失敗経験が乏しく、失敗することの精神的負担を大きく見積もっているように感じています。厚生労働省の調査でもその傾向が伺われます。

「仕事の失敗や責任の発生」が20代にとっての最大の「強いストレス」

厚生労働省が毎年行う労働安全衛生調査(実態調査)の労働者調査では、仕事や職業生活に関する強いストレスについて、何がストレスの要因か尋ねています。

仕事の量・質、役割や地位の変化、人間関係、仕事の失敗や責任の発生、顧客・取引先等からのクレームなど、いくつかの項目の中から複数回答可能として、労働者にとっての強いストレスの要因を分析しています。労働安全衛生調査は長い歴史ある調査ですが、強いストレス要因の上位は概ね固定です。

労働者全体でみると例年第一位は「仕事の量・質」です。ところが年代別にみると、20代では、「仕事の失敗や責任の発生」が例年第一位です。直近令和3年データでは20代の38.3%が強いストレスと回答しました。4割近い人が、「仕事の失敗や責任の発生」を強いストレスと感じているというのは大変大きな数字と思います。

失敗を恐れず挑戦を促すには

先ほど、今の世の中の情勢が不作為バイアスを助長しやすいことを述べました。それでも、不確実性を回避したい気持ちを減らし、行動に伴う機会費用の見積もりも減らすことができれば、不作為バイアスを軽減することが可能なはずです。

自分の取り組みが成功するとは限らないという、不確実性を回避したい気持ちを変えていくためには、成功するかどうかを評価するのではなく、挑戦して取り組むという行動自体を評価することが有効でしょう。もちろん、その挑戦の内容にはばらつきがあるでしょう。しかし不作為では何も変わりません。挑戦するという行動を動機づけることが重要だと思います。

また、行動に伴う機会費用の過大な見積もりに対しては、挑戦を後押しし、様々なサポートを入れて成功を促す働きかけをすることによって過大な見積もりを修正することができるでしょう。

最後に、ただでさえ失敗慣れしていない新入社員に対しては、失敗しても嫌わることはなく、失敗しても大丈夫という安心感を与えていくことが重要です。仕事の失敗や責任の発生のストレスが軽減すれば挑戦が促されると思います。

新入社員が消極的に見える背景には職場環境が影響している面があると思います。「今年の新入社員は・・・」という前に、育成スキルを磨いていきましょう。