久々の帰省や旅行の計画、買い物や飲食・飲み会など、コロナ前の人々の生活が少しずつ戻ってきているこの頃です。
全員が我慢していた時には自分の欲求にピッタリ蓋をしてきた私たちですが、行動制限が次第に緩和されてくると、”蓋を解き放ちたい自分”と、”我慢しないといけないと思う自分”との間で矛盾を抱えます。今回はこうした矛盾に焦点を当ててみます。
認知的不協和
自分の思考や行動に矛盾を抱えた状態を心理学では「認知的不協和」と言います。
「ダイエットしたいがおいしいものを食べたい」、「体に悪いとわかっているがたばこやお酒を止められない」、「お金はないけど、どうしても手に入れたいものがある」等々、日頃から私たちは様々な認知的不協和を抱えています。
直近で相当数の国民が悩んだであろう、あるいは今なお悩んでいるかもしれない「認知的不協和」は、「明日の仕事に響くとわかっていても、深夜の試合を見たい」というワールドカップサッカーの応援を巡る矛盾でしょう。
認知的不協和を解消するための認知の修正
認知とは、物事の捉え方、考え方のことです。認知的不協和によって矛盾を抱えた状態に陥ると、私たちは、不快感やストレスを軽減するために自分の認知を修正して矛盾を解消しようとします。
認知的不協和解消のための認知の修正には2つのアプローチがあり、よく出される例は「甘いレモン」と「すっぱいブドウ」です。
①甘いレモン=新たな価値の付与
「本当は甘いものが欲しかったが、レモンしか得られなかった。」
こうした矛盾を抱えた時、「このレモンは甘い」と信じることで、矛盾を解消することができます。
レモンと聞くと、どうしてもすっぱさが思い出されますから現実的には難しそうですが、一つの比喩として、レモンに”甘い”という新しい価値を付与して、手に入れたレモンで満足!と考え、矛盾を解消する方法です。
②すっぱいブドウ=価値下げ(脱価値)
イソップ物語のすっぱいブドウの話、ご存じと思います。高い所においしそうなブドウを見つけたキツネ、懸命に伸びても届きません。悔しさから「どうせこのブドウはすっぱくてまずいのだろう」とブドウの価値を下げる形で矛盾を解消した、というストーリーです。
さて、深夜のサッカー観戦をなさった方、明日の仕事への影響という矛盾に対してどのように認知を修正しましたか?
上記の2つのアプローチに即して考えてみたいと思います。
新たな価値を付与する例(甘いレモン)
「応援で気持ちが高揚する。この高揚感は明日の仕事のモチベーションにもつながる」
価値下げ(脱価値)の例(すっぱいブドウ)
「明日は大した仕事がないから睡眠不足でも影響はないだろう」
この中間として、前半、あるいは後半だけ応援したという方もおられましたね。
色々言い訳しながら私たちは過ごしていますが、悩みながら結論付けた考え方でひとまずよしとしていきましょう。
長期にわたって矛盾を抱え、不快感やストレスを抱え過ぎるのは体によくありません。
ただでさえ慌ただしい年末です。自分の判断を後悔せず、ポジティブに考えていきましょう。