新入社員の多くは6月末で試用期間を終えて本採用となり、育成には一段と熱がこもっているころでしょう。ところで育成者の指示が時や状況によって真逆となっていたり、育成に携わる人が複数いる場合に互いの指示が真逆の内容だったり、していませんか?新入社員はメッセージの板挟みにあい、身動きとれなくなってしまいます。
たとえば、こんな例です。
・「質問があれば遠慮なく聞くように」と言われたので、質問に行くと「そんなことぐらい自分で考えろ」と言われた。
・「自由に意見を言うように」と言われたので、意見をいうと「勝手なことを言うな」と言われた。
・ある先輩は「先にAやってね」と言い、次にやってきた先輩が「なんでAやってるの!わたしBやるようにいったよねえ」と言った。
思い当たるという方、おいでだと思います。・・・思い当たらないという方の中にも、失礼ながら、自分の指示や言ったことをすぐ忘れてしまうタイプの方もおり!自分が気づかぬ間に矛盾したメッセージを出している可能性があるかもしれません。
二重拘束(ダブルバインド)
心理用語で二重拘束(ダブルバインド)というのがあります。この例のように、二人以上の人との間で、メッセージとメッセージが矛盾するコミュニケーション状況に挟まれることを意味します。
家族内のコミュニケーションに二重拘束のパターンがあると、その状況にある人が、統合失調症に似た症状(心が引き裂かれてしまう)を示すと指摘した説から出て来た言葉です。
もともとの性格もありますが、特に新入社員という立場もあって、目上の人には従わなければいけないと思っており、人の期待に応えよう、嫌われまいと振る舞う方が多いです。二重拘束状況にはめられると、どちらのメッセージに従っても相手を喜ばせることができないため思考が停止し、相手への恐怖心が募ったり、人には裏メッセージがある、信用できないと人間不信になってしまう場合もあります。
育成に熱心なつもりでも、これでは新入社員の混乱とストレスが増すばかりです。
育成の方針は一貫性があり、複数が関わる場合にはそのメンバー間の目線が揃っていることが重要です。職場の育成余力が低下していることもあり、うまく機能しない職場もあるのではないでしょうか。
新入社員から先輩には相談しにくいため、まずは育成サイドで、二重拘束の環境となっていないかチェックし、本人にも何か困っていることはないか、丁寧に聞き取っていきましょう。怖いのと警戒心で初めはあまり言い出さないので、じっくり聞いてあげてください。