世代間のコミュニケーションギャップは職場でしばしば話題となります。構成員の年代の偏りや時代背景、価値観の違いなど、様々な要因が指摘されるところですが、自分にとっては当たり前の言葉遣いが、今やその意味では通じない、場合によっては反対の意味としてとられるとしたら・・・ぎょっとしませんか?
今回は、文化庁の「分かりあうためのコミュニケーション(案)」より、世代別のアンケート結果と共に紹介されている「言葉の用法の揺れ」についてお話しします。
「言葉の用法の揺れ」とは
文化庁の上記ペーパーで紹介されている面白い例があります。「計画が煮詰まった」と聞いた時、皆さんはどのような状態を思い浮かべますか?
「煮詰まる」とは、元々「議論や意見が十分出尽くして結論が出る状態になること」を意味しますが、近年では正反対の意味である、「議論が行き詰まって結論が出せなくなる状態」として用いられる場合があると言います。
アンケートでは、「結論が出せなくなる」という新しい意味でとらえる人が10代76.3%、20代69.5%、30代73%において高い一方、「結論が出る状態になる」という本来の意味でとらえる人は50代77.3%、60代以上73.1%において高いとの結果となりました。
「計画が煮詰まった」という言葉を発した時、年配の世代と若手の世代が分かり合えないと思うのは、意味の変化が起きているため、もっともなのです! 同じ日本語を話しているため気づきにくいのですが、国語の問題って大きいのですね!
要注意の「言葉の揺れ」、その他の例
本来と反対の意味で伝えられることのある言葉の例は色々あるようです。例をいくつか引用すると以下のとおりです。
慣用句等 |
本来の意味 | 新しく生じた意味 |
役不足 |
本人の力量に対して役目が軽すぎること |
本人の力量に対して役目が重すぎること |
流れに棹さす |
傾向に乗って、勢いを増す行為をする |
傾向に逆らい、勢いをなくす行為をする |
檄を飛ばす |
自分の考えを広く伝え、同意を求めたり決起をうながすこと |
元気のないものに刺激を与えて活気づける |
おもむろに |
ゆっくりと | ふいに |
私自身、意味を勘違いしている言葉があり、ぎょっとしました。職場で使われていそうなフレーズですが、皆様いかがでしょう?
今や誤用が多数派?
何故言葉の意味は本来の意味から変化していくのでしょう?
言葉は人々が使い続けるうちに言い間違えが生じ、その言い間違えに気づくことなく拡散する性質があり、誤用と気づいたころには既に相当流布していることがあるそうです。誤用すなわち問題と考えることは難しく、言葉がそのように変化するにはそれなりの理由もあるのだ、ととらえる向きもあるようです。
幸いなことに、日頃のコミュニケーションでは私たちは様々な文脈の中で言葉を用いていて、互いに文脈の中で言葉を理解しようとするので、誤用そのものが大きな問題を起こすことは少ないそうです。
しかし、ビジネスにおいては言葉のかけ違いが大きな誤解にもつながりかねず、私は重要な問題だと思います。
言葉の揺らぎによるコミュニケーションの問題への対処
これらの情報をもとに、言葉の揺らぎについて私たちができそうなことは以下のことでしょう。
① 用いる言葉によっては、正反対のメッセージとなり、相手との間に誤解を生んだり、人間関係に妨げが生じたりするリスクがあると知っておくこと
② 自分にとっては当たり前と思っている言葉の使い方が、もしかしたら変化したかもしれないことを知っておくこと
③ そうした言葉をなるべく使わないか、あるいは言葉を補足して文脈として伝えるなどの工夫を日ごろから行うこと
④ 自分の発した言葉に対する相手の反応を気にかけ、わかりにくさがありそうな場合は話し合うこと
世代間コミュニケーションンギャップという複雑かつ難しい問題のとりかかりの一歩として、自分が無意識に使っている言葉遣いに注意を払ってみましょう!