ユーロビジョンというヨーロッパ・イスラエル・オーストリアの国々による歌のコンテストで、今年はウクライナ出身のバンド、Kalush OrchestraによるStefania(ステファニア)が優勝しました。

日々のウクライナに関するニュースは、もしかしたら私に「否認」という、「そこに事実はあるのに、ないものとしたい」という防衛が働いているのか、実感というものからは隔たっている印象がありました。

しかし、たまたま昨日(5月21日)のBBC放送で受賞に至るまでのメンバーの想いや家族の様子、壊滅的打撃を受けた街で撮影されたミュージックビデオについて知る機会があり、大きく心を揺さぶられました。

グロウマインドのコラムとしては異例ですが、日本ではあまり報道されていない気がしますので、まずStefania(ステファニア)のミュージックビデオのリンクを貼らせていただきます。

Stefania(ステファニア)(オフィシャルビデオ ユーロビジョン2022)

Stefania(ステファニア)という曲

この曲は、髪が白くなっていく母親を想って書かれたものなのですが、発表直後に戦争となり、今は母という対象を超え、母国を想う歌としてウクライナで歌い継がれているそうです。

ミュージックビデオは、破壊された街の中で親と生き別れとなった子供たち、その子供たちを親の元に戻そうとする女性兵士、そしておびただしく、真新しい墓の数々などが描かれています。感情を押し殺そうとしつつも涙があふれてしまう、女性兵士たちの表情もまた悲しみを誘います。よく見ると、子どもが再会する家族は、母親・おじいさんで父親は不在です。お父さんは戦地にいるか、亡くなってしまったかと思うとなお、悲しみが込み上げます。

ウクライナ語なのと、ラップも入っているので、歌詞は「ママ」に近い言葉が聞こえる以外、私には全くわからないのですが、既に日本語訳を試みてくれた人々がおり、その中で、私の感覚に近い方の歌詞を転載させていただきます。

以下、上記リンク先より

ステファニア 母のステファニア

草花が咲き誇っても 母の髪は灰色になる

母さん 子守唄を歌ってくれ

もっと母さんの愛しい言葉が聞きたい

 

赤ん坊の俺をあやして母は俺にリズムを教えた 俺の根性は母譲りなんだからお前に奪えるわけがない

ソロモン王より知恵の深い母親だと思うね

道が壊れてもいつだって母さんのもとへ帰るよ

嵐の中だって母は俺を起こさない

母と祖母が銃口を向け合う弾丸みたいな喧嘩してても

誰より俺を理解してる 嘘をついたりしない 疲れた時だって俺をあやしてくれた

ルーリルーリルーリ…

 

ステファニア 母のステファニア

草花が咲き誇っても 母の髪は灰色になる

母さん 子守唄を歌ってくれ

もっと母さんの愛しい言葉が聞きたい

 

俺はもうオムツの赤ん坊じゃないのに、母はまだ俺をガキみたく気にかける

俺はもうガキじゃないのに、俺が外に出ると血相を変えて「罰当たりな子だね」ってね

母さん あんたはまだ若いぜ 俺が母さんの優しさに恩返ししないで人生を謳歌してもいずれは死ぬ

叩いて刺して弾けて焼いての人生 でも永遠の愛を母へ

ルーリルーリルーリ…

 

ステファニア 母のステファニア

草花が咲き誇っても 母の髪は灰色になる

母さん 子守唄を歌ってくれ

もっと母さんの愛しい言葉が聞きたい

 

ステファニア 母のステファニア

草花が咲き誇っても 母の髪は灰色になる26

母さん 子守唄を歌ってくれ

もっと母さんの愛しい言葉が聞きたい

母国と文化

母親がテーマであることについては父親の立場からはきっと色々な思いがあることでしょう。現状では母国、母語、母なる大地など、母のつく言葉が多く、これは英語でもmother country, mother tongue, mother earthなど、同様の傾向です。

BBC放送で印象的だったことの一つに、歌っている衣装が、100年以上家族が大切に保管してきた民族衣装であることがあります。素晴らしい刺繍の衣装です。

伝統衣装を着て、ウクライナの伝統であるフォークソングを現代音楽と融合して歌うことを通して、ウクライナの文化は固有のものであり、尊重されるべきという強いメッセージもこめられているようです。

最後に先程リンクしたミュージックビデオの最後に書かれている英文を、つたない私の訳でご紹介します。

以下和訳

このビデオはロシア占領の脅威に苦しむキーウ近郊のBucha, Irpin, Borodyanka, Hostomelで撮影されたものです。

勇敢なウクライナの人々、子どもを守る母親、自由のために自らの命を与えた全ての人に捧げます。

全ての男性、全ての女性、全ての無実な子供

ウクライナで起きている戦争には様々な側面があります。しかし、最も苦しい時に私たちの心を生き生きと保ってくれるのは、私たちの母親の顔です。

ウクライナと共に立ち上がろう!

和訳は以上

この歌が言葉を超えて世界の人々の心を動かし、ウクライナの平和のための力となっていくことを願います。