アメリカでは、1992年以降、4月をStress Awareness Month(ストレスへの認識を持つ月)としています。

WHOによるCOVID-19のパンデミック宣言が行われて2年が経過し、私たちの生活は根本から大きく変わりました。急激な経済状況の変化、国際情勢の危機にも遭遇しています。新年度の忙しさも加わって職場や家庭のストレスが一層増している方は多いことでしょう。

ストレスにどんなにうまく対処してきたとしても、次から次へと新たなストレスに晒され続けると、次第に対処する力が衰え、私たちの心身は疲弊してしまいます。

今回は、新しい環境や変化に適した身体の生理機能や行動を調節する機能である「アロスタシス」と、その機能不全である「アロスタティックロード」についてお話しします。

アロスタシス

私達の体は、外部の環境が変化してもある一定の状態を保持しようとする働きがあります。これは「ホメオスタシス(生体恒常性)」と言われるもので、外気の寒さ暑さに対して体温が急激に変化することなく保たれることや、風邪や切り傷などから自然に回復することが出来るのも、ホメオスタシスの機能のおかげです。

「アロスタシス」は、1988年に提唱された比較的新しい概念で、「動的適応能」と訳されます。ホメオスタシスが状態を一定に保とうとすることに対して、「アロスタシス」は新しい環境や変化に対して、脳がその負荷を予想し、それに応じた身体の生理機能と行動を調節します。

例としては、起き上がる時に血圧が上がる、プレゼンの際に心拍が上がるなどがあります。起きる時に十分に血圧が上がらなければ起き上がれませんし、プレゼンの前に心拍が上がるのも、緊張感をもって望む上で重要な備えです。

アロスタシスは私たちの社会生活をより適応的なものとする上で非常に重要な役割を果たしているのです。

アロスタティックロード

慢性的なストレスや、適応能力を超えたストレスに晒されると、アロスタシスは機能不全に陥ります。この状態を「アロスタティックロード」といいます。

アロスタティックロードの状態では内分泌系、循環器系、感情反応が休みなく活動するため、血流の乱れ、高血圧、認知機能の低下、抑うつなど精神の乱れをもたらします。その結果、糖尿病や高血圧症、精神疾患など、健康リスクが高まると指摘されています。

内分泌や循環器などの状態を自覚することは難しく、自分がアロスタティックロードの状態にあるかを知ることも難しいものです。こうした中で、どのようにして、アロスタティックロードのリスクを減らすことができるのでしょうか?

この点については、日頃のストレス対処、例えば運動、睡眠、食生活・飲酒・喫煙生活の見直し、ソーシャルサポートの活用などが有効と考えられています。加えて、状況に対する脳の予想がアロスタシスを健全に保つ鍵となる点も重要です。不透明感が強いと予想がしにくく、心身に負荷がかかることから、状況を的確に把握することに努め、不透明感を減らしていくこともリスク軽減に役立つと考えられています。

COVID-19以外にも不透明感の強い社会経済状況を迎えています。新年度初めのこのタイミングで、改めて自分にとってのストレスへの認識をしっかり保ち、日々の生活で出来るストレス対策を行っていきましょう。