全国の新型コロナウィルス感染者数が8万人に迫る勢いとなっています。

感染者・濃厚接触者の自宅待機、休校・休園に伴う保護者の休業、職場の休業者急増に伴う業務調整等、突然の事態への対応に多くの方が疲弊しておられると思います。

緊急事態とは

東洋大学の古田富彦先生(2003)によると、緊急事態とは、下記の状態の一部またはすべてを、その中にいる人が「当てはまると自覚している」状態のことをいいます。

ご自身の今をチェックしてみてください。

①非日常性:日常的に対処している事態と全く異なる

②予想外性:その当事者である人間にとって全く予想されていない

③突発性:事態の発生が突然

④結果の重大性:何らかの処置を行わないと重大な結果を招く

⑤時間の切迫性:事態への対処に利用できる時間が限られている

⑥対処の当事者性:重大な結果を避けるために自分自身が対処しなければいけない

私達は平常であれば冷静に状況を捉え、自分にとって最も適切であろう行動を選択することができます。しかし、緊急事態で恐怖や不安、焦りなどの強い感情にとらわれている時には注意力や思考力、判断力が低下し、適切な行動を選択できなくなることがあります。

コロナ禍でみられる馴化(じゅんか)・脱馴化(だつじゅんか)

人は、似たような刺激を繰り返し受けると、刺激に対する反応が減少します。このプロセスを心理学では馴化といいます。

まん延防止重点措置が始まっても、都内の日中の喫茶店や飲食店、街の人出はさほど減っていないように見えます。ある方にとっては、コロナ関連情報は似たような情報の繰り返しに見え、馴化が起きて不安や恐れなどの反応が減少しているのでしょう。

一方、一旦慣れた(馴化)した後であっても、それまでの刺激と異なる強力な刺激が起きると、私たちの反応は再び大きくなります。これを脱馴化と言います。

オミクロン型の感染者・濃厚接触者・関連する皆様にとっては、突然の困難は大きな反応を呼び覚まします。年末まで概ね落ち着いた状況が続いていただけに、恐れや不安の再燃は私たちのこころをすり減らします。

感染の波が来るたびに刺激への馴化と脱馴化が繰り返され、私たちのこころは休まることがありません。そんな中で緊急事態に直面した時、私たちはどうやって回復を図ればよいのでしょうか。

緊急事態からの回復の第一歩

緊急事態の状況を改めてみてみましょう。①~⑤は状況に関することで、すぐさま自分が変えられるものではありませんが、⑥の対処の当事者性(自分が対処しなければいけないという認識)については変えることができます。

「家のことも会社のことも、自分がやらねばならない」という責任感の強さは平時にはプラスに働くことも多いですが、緊急事態で自分に余力がない時には自分を苦しめる要因となります。

家族や同僚のためにがんばっても、追いつめられた状況での自分の判断や行動が適切なものであるかはわからないものです。

「自分が対処しなければいけない」という思いを緩めてみましょう。

自分の周りの人に相談することでより良い解決が見つかる可能性があります。また、人にサポートを頼むことによって、自分のこころの余裕が回復し、限られた自分のエネルギーや資源をより効率的に配分することができるでしょう。

緊急事態に陥ることは誰のせいでもありません。どうか自分を責めないよう、お過ごしくださいませ。