年末年始、黒豆を煮たり、肉料理や煮つけを作ったりして結構大変だったのが灰汁(あく)取りでした。ふつふつ煮立つたびに灰汁はどんどん湧き、一体どこまで取ればよいのか、見極めも難しいものです。

灰汁(あく)が湧くと「取らなければいけない」と勝手に思い込むものですが、さて、灰汁(あく)ってそんなに悪いものなのでしょうはか?

灰汁(あく)とは

灰汁(あく)は、もともとは、草や木の灰を水に浸した上澄みの液で、これを使って食品の強いくせを処理することに用いられました。転じて、嫌な味やくせそのものを「あく」と呼ぶようになり、「えぐみ」「にがみ」などと表現されることが多いようです。

水煮で販売されているので気づきにくいのですが、山菜やたけのこなどが「あく」の強い食品の代表例となります。

「あく」は「悪」?

灰汁(あく)の中には健康に有効なものと、害を及ぼすものと双方があります。

健康に有効な灰汁(あく)の例は「タンニン」(ごぼう、れんこんなど)や「カテキン」(大豆など)です。健康に害を及ぼす灰汁の例は「シュウ酸」(ほうれんそうやたけのこなど)です。

灰汁(あく)を十分とらない、ほうれんそうやたけのこを大量に取り入れると、腹痛や結石など健康を害する場合があるといわれています。しかし、「あく」は食品の風味の一部でもあり、除去しすぎると特有の風味も損なわれてしまいます。

植物にとって灰汁(あく)は、えぐみや苦みを放つことで草食動物から身を守る術の一つとなります。また、食べた動物にとっては体内の生理環境が活性化し、より健康になれる面があります。これらは、忘れられがちな灰汁(あく)のもつポジティブな側面です。

あくの強い人

あくの強さが人に形容される時は、独特のくせがあり、とっつきにくい、きつい、こだわりが強い、自己主張が激しいなど、ネガティブな意味で強い個性となります。これは灰汁(あく)のネガティブな側面に焦点づけた用語なのでしょう。

しかし、人の灰汁(あく)は誰しもが持っていて、だからこそ個性豊かな魅力を放つものです。

新しい生活様式の中での「あく」

集団生活の中で「あくの強さ」を疎まれないよう気にするあまり、自分本来の個性をつぶして振る舞っている方はとても多いものです。

コロナ禍は3年目を迎え、人々が集う機会や外出の機会が急速に減りました。それに伴い人目を気にする必要も減りました。これを機会に自分が備えている「あく」を良い個性として認め、自分らしく、のびのび過ごしていきたいものです。

新型コロナ感染が再び急拡大の局面を迎えています。今年一年の皆様のご健康とご健勝をお祈り申し上げます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。