前回パワハラの話をしたので、今回は違うテーマで・・・とも思ったのですが、厚生労働省出身の女性代議士による秘書への暴力、暴言が大きな話題となりましたので、再度とりあげます。

前回は民事の個別紛争を解決するというレベルのパワハラケースに触れましたが、言うまでもなく、今回は法的責任の追及を伴う重大事案です。                    (画像は厚生労働省の明るい職場応援団HP掲載のものです)

女性代議士によるパワハラの内容

週刊新潮(2017年6月29日号)に記載された内容が事実だとすると、数々の暴言以外に、つねる、殴る、ける、ハンガーで叩くなどの暴力、“鉄パイプでお前の頭を叩いてやる”、“お前の娘にも危害が及ぶ”といった脅迫もあったようです。このレベルは刑法上の責任を追及されるレベルであり、記事内でも刑法の教授が“怪我で診断書も取っているのであれば、殴るという行為は15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される傷害罪が成立する”と述べておられます。

本人はお見舞金という金銭の解決を目指しているそうですが、国民を代表する立場にあり、増してやパワハラ防止の旗振りをしている厚生労働省出身であることを考えると、厳しい処分が行われてしかるべきでしょう。

パワハラによる法的責任

パワハラそのものを明確に規定する法令はないようですが、パワハラは働く人の意欲の低下や心身の不調を招くことがあり、今回のように重大なパワハラ事案においては加害者はもちろん、企業(使用者)も法的な責任を問われることがあります。法的責任の内容は次のとおりです。

① 加害者の法的責任

・刑法上の「傷害」、「暴行」、「名誉棄損」、「侮辱」、「脅迫」

・民法上の不法行為に基づく損害賠償責任(心身の不調に対して)

・そのほか慰謝料など

② 企業(使用者)の法的責任

・民法上の不法行為責任(使用する労働者が職務遂行中に第三者に損害を与えた場合の損害賠償責任)

・労働契約法、民法上の安全配慮義務違反による債務不履行責任(使用者は労働者の安全に配慮する義務を負う。使用者が履行しない時は賠償を請求できる。)

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企業側にとっては信頼を失墜するきっかけともなり、ビジネス上のリスクも大きなものとなります。

組織のリスクマネジメントの観点からもパワハラ防止策は必須です。