男女通じて史上最多のメダルを獲得し、東京オリンピックでもメダルを期待されていたシモーン・バイスル選手が7月27日、「自分の心の健康に集中しなくてはならない」と判断して体操女子団体決勝を途中棄権、翌日の個人総合も欠場しました。

史上最高の選手(GOAT, Greatest Of All Time)と呼ばれ、完璧な演技をするのが当たり前と期待されるプレッシャー、無観客の試合という慣れない環境、1年の延期など、大きなストレスを抱え、競技開始前5時間半ほどは震えが止まらず、休まらなかったのだといいます。

5月下旬の全仏オープンでは大坂なおみ選手が、重圧に悩みうつ状態にあったことを公表しています。また、オリンピック4連覇の水泳王者、マイケル・フェルプス選手は2012年ロンドンオリンピック終了後に深刻なうつ病を患い、自殺まで考えていたことを公表し、自身の経験をメンタルヘルス改善に役立てようと活動しています。

今回はトップアスリートの心の健康の問題について、米国、英国のオリンピック・パラリンピック委員会が立ち上げたメンタルヘルスサポートついてご紹介します。

米国、英国のオリンピック・パラリンピック委員会のメンタルヘルスチーム

アメリカ心理学会の最近の記事によると、本年2月、米国オリンピック・パラリンピック委員会は史上初めて、従来からあったパフォーマンスのサポートに加え、メンタルヘルスをサポートするチームを増強しました。オリンピック・パラリンピック合わせて4000人の選手、スタッフが対象です。

同委員会の中の5つのプロバイダ、委員会外の委託で3つの契約先を設け、カウンセラー、マリッジ(結婚)&ファミリー(家族)セラピスト、精神科医、ソーシャルワーカーなど有資格者が対応します。

相談内容はコロナ陽性となり競技に出れない、演技の棄権、摂食障害、家庭内暴力やトラウマ、スポーツからの引退など様々とのことです。サービスはオンラインで週7日、24時間提供されるという、大きな規模となります。

英国オリンピック・パラリンピック委員会もスポーツ心理学者や医師の下で10名のメンタルヘルスの専門家を組み、今回来日しているようです。

コロナ禍での開催という特殊な事情がこのような特別チームの編成となったのかもしれませんが、トップアスリートの心の健康の保持増進にとっての大きな一歩となること、間違いないでしょう。