東京都では緊急事態宣言の延長が決まりました。職場の中はもちろん、通勤途上や立ち寄る店など、皆さんが日々過ごす「場」での感染防止に細心の注意を払ってお過ごしのことと思います。
「安全」と「安心」の違い
職場やお店では新型コロナ感染防止対策として、手指消毒、検温、換気やアクリル板設置など、様々な「安全」への配慮が行われています。ただ、それで「安心」できるかは、人によって異なるものです。
「安全」は科学的、客観的なものであるのに対して、「安心」は心理的、主観的なものなのです。
駅や場内アナウンスで、「皆さま、どうか安心してご利用ください」というフレーズを時々聴きますが、「皆様が安心してご利用いただけますよう、努めています」という方が好感度は高いでしょう。安心かどうかを決めるのは「自分」なのですから。
駅のホーム柵の設置のように対策そのものが心理的・主観的安心に大きく貢献する場合もあるのに、何故コロナ対策は私たちの安心に結びつきにくいのでしょう?その理由は以下の点にあると思います。
①ウィルスという、見えない相手を対象としていること
②1年以上取り組んできたのに対策の効果が限定的であること
③自分は努力したとしても、身近な人(同僚や家族、施設利用者等)から感染するリスクがあること
私たちが日々身を置く「場」の安心は心の健康や仕事のモチベーションにとって大切です。少しでもできることはないでしょうか?
「安心」を得るには
「安心」を得るための鍵は「信頼」と考えられています。新型コロナ対策として、「場」の信頼を高めるために工夫すると良い点がアメリカ心理学会のHPの記事に紹介されていました。日本にも当てはまる事柄を抜粋します。
環境を提示する側の工夫
①人との接触を減らす工夫やテクノロジーの活用、物理的に距離を取ることのできるレイアウト、掃除のしやすさ(特に表面がふきやすいこと)
②皆が見ている時に定期的に換気や清掃を行うという動作を行うこと。組織が感染予防対策を重視している姿勢を見せることで、人々の信頼を高める。
③人々にとって慣れ親しんだ環境は維持すること。コロナ対策を理由にオフィスをすっかり変えてしまうことは不安につながる。
自分自身が行う工夫
〝自分が環境に働きかけることができるという感覚を持つこと“が重要だと言います。例えば以下のような例です。
①自分で窓やドアを開ける、外に出る
②植物や自然の素材を身辺に置く
③散らかったものを整える、除菌する
以上参考記事 Building a safe space in the pandemic
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アメリカには環境心理学という分野があるそうで、有益な情報が多いのですが、一方アメリカでは通勤はマイカーが多く、通勤電車という場が話題になりにくいのが難点です。
日本では、働く上で最も怖い感染リスクが通勤電車という方がかなりいます。窓を少し開けて換気には配慮がされていますが、手指消毒の備えもありません。ラッシュ時は今なお満員に近い混雑のため、自ら環境に働きかける余地が物理的にも心理的にも殆どない「場」です。
コロナ状況以前より、通勤電車は働く人にとっての代表的なストレス因でした。コロナ状況が加わる中で安心感を上げる方策は一段と難しいですが・・・
既に車内で多くの方がそうしているように、自分の力ではコントロール不能な状況では、その現実から距離をとり、他のことに没頭して時間を過ごすことをお勧めします。ドラマを見たり、音楽を聴く、SNSのフォロー、勉強に充てるなどです。現実を直視せず、回避することによって心の中にスペースを持つことができます。安心感を高める方策とはなりませんが、ストレスマネジメントとしては有効です。
コロナ禍は長丁場になりそうです。様々な対処の方法を考えながら過ごしていきましょう。