オリンピックに関連して、重なる不祥事、今回はタレントの容姿に関する言動でした。

セクシャルハラスメントというと身体的接触や性的な話をイメージする方が多いと思います。容姿や年齢、身体的特徴に関する言動もセクハラの典型例となること、案外知られていないようです。

「自分には関係ない」、「自分は大丈夫」と思われがちなセクシャルハラスメントですが、私が相談業務に携わってきたこの20年の間をみても相談傾向は随分と変わってきました。

法令改正の影響も重要なところですし、セクハラに関する調査結果などと合わせて再点検していきましょう。

セクシャルハラスメント(セクハラ)とは

セクハラとは、職場において、労働者の意に反する性的な言動によって、労働条件について不利益を受けたり、就業環境を害されることをいいます。

初めて法的措置が行われたのが1999年の男女雇用均等法改正で、以降しばしば、改正が行われてきました。ポイントは以下のとおりです。

1999年改正 男性から女性へのセクハラ

2007年改正 女性から男性へのセクハラも対象となる

2014年改正 同性からのセクハラも対象となる

                   性別役割意識に基づく言動の禁止: 

                          例「女性にこの仕事はふさわしくない」、「男なんだから」など

2017年改正 性的マイノリティの方へのセクハラも対象となる

ここまでの法令改正で、セクハラは男性から女性だけでなく、女性から男性、同性同士、性的マイノリティの方への言動も対象となったこと、また、自分の中にある、性別役割意識にも気をつけなければいけないことをしっかり押さえましょう。

そして、2020年、パワハラ法案と同時にセクハラ法案も改正となっています。官庁トップのマスコミの方へのセクハラ問題を受けて、自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合に他社が実施する雇用管理上の措置(事実確認など)への協力に応じるよう努めることとなりました。また、セクハラの行為者の範囲を、顧客や患者・家族、生徒も含めて拡大されました。

何が性的言動に当たるのか、わかりにくいというお話を時に承ります。この点についてみていきましょう。

容姿や年齢、身体的特徴についての言動

「若々しく見える」、「今日はきれいだね」など、一見すると褒め言葉のようなものでも、それが相手にとって不快感を与える場合には、セクハラに進展する危険があります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構のセクハラに関する調査(2016年)によると、セクシャルハラスメントを経験した人の割合は28.7%で、内容は以下の順位でした。

1位 容姿、年齢、身体的特徴について話題とされた         53.9%

2位 不必要に身体に触られた                   40.1%

3位 性的な話や質問をされた                   38.2%

4位 結婚、子供の有無など私生活に関わることを必要以上に質問された36.8%

容姿、年齢、身体的特徴について話題とされることが最も多いという結果です。また、交際関係や家族のことなど、私生活に過度に立ち入られることもとても多いことがわかります。

上記以外では、「おじさん、おばさん」、「男の子、女の子」、「~ちゃん」などの呼び方をされたというのも代表例です。

職場で「これくらいならいいだろう」と思って「もっと痩せたほうがいいんじゃないか」、「付き合っている人がいるのか」など、踏み込んだ発言をしていませんか?

内心傷ついているのに、そうした自分を悟られまいと、ニコニコして、平気そうに振舞う方、多くおられます。

年度初めは新しい出会いがありますし、緊急事態宣言解除で久々に顔を合わせたりする機会が増えます。

「このくらいは構わない」と自分の判断で思い込まず、相手の気持ちを慮ることを常に意識して言動に注意していきましょう。