「おせっかい」は、「出しゃばって世話を焼く」、「不必要に人に立ち入る」という意味で、ネガティブに使われることが多い言葉です。しかし、コロナ禍で職場の同僚との接点が減り、孤独を感じやすくなった今、気遣いに満ちた良質のおせっかいならば、むしろ必要ではないでしょうか。
昔はいた、良い意味でおせっかいな方たち
職場をぶらぶら歩き、気になる後輩に声をかけて世話を焼いてくださる方というのは、昔はどの職場にもいたものでした。
ひとり、またひとりと、こうした良い意味でのおせっかいな方々が職場からいなくなった背景には成果主義の浸透があるのでしょう。水面下の活動の貢献は数字にならず、成果の出せるポジションへと異動なさるのを見てきました。
おせっかいの由来
漢字で書くと「お節介」ですが、由来は、すり鉢などの内側についたものを掻き落とす道具の「切匙(せっかい)」にあります。「溝のうちに入り込む」ことから「他人の内に入り込もうとする」ことを「おせっかい」というようになり、間に挟まるという意味での「介」の字を含んだ「節介」があてられたのだそうです。
良質のおせっかい
「切匙」は溝にたまったものを掻き落とす道具。サポートの対象となる方は、心に不安や恐れが溜まっていたり、与えられた業務がうまくこなせず溝に挟まったような感じだったりして、確かにすり鉢の細かな溝一杯に何かが詰まっている感じです。こうした状況での「切匙」は、掻き落とすのでは不十分です。
良質なおせっかいは、詰まったものを掻きだしながら丁寧に受け止め、次の一歩につながるような支援を目指します。
気持ちの面であれば
①どのような気持ちに苦しんでいるのか、丁寧に耳を傾け、受け止める
②健康面に影響していないか気遣う
③これまでの頑張り、プロセスを認めてねぎらう
業務がうまくこなせないのであれば
①何が妨げになっているのか、本人の目線で共に考える
②知識やスキルが不十分、優先順位付けができない、相談しやすい身近な人が不在などの状況が明らかとなった場合には、解決に向けての手立てを共に考える
③場合によっては上司との間に入り、職場環境調整を図る
先日の日経新聞で、「隣のおせっかいおじさん・おばさん」という役割を持ったシニア職員の取組が紹介されました。後輩達に困ったことがないか、対面だけでなく、電話やウェブ面談で気軽な相談に応じているそうです。
リモートワークで同僚の様子が見えにくくなった職場も多いでしょう。短い時間でよいので定期的に対話の機会を持つことは、ご本人へのタイムリーなおせっかいに大いに役立ちます。
皆がこのコロナ禍で苦しみを抱えていますので、良質のおせっかいが職場のそこかしこで、自然発生的に広まることを願っています。