コロナ禍が職場の人間関係からくるストレスにどのように影響しているかは、大規模調査が乏しいので何ともいえないですが、面談の中では、リモートワークで職場のコミュニケーションが減って孤独感が強まったと述べる人がいる一方、苦手な人との接点が減って楽となった人もおり、反応は二分している印象です。
そうした中で、「人から言われたひと言がなかなか頭から離れない」というご相談は相変わらず多いので、このテーマについてお話します。
人から言われたひと言が頭から離れないのは
「人から言われたひと言がいつまでも頭から離れない」というのは、物事の捉え方、考え方のバイアスの一種である、「心のフィルター」の代表例です。
リモートワークなどにより職場の同僚との接点が減ったので、頭から離れないほど人から言われることもないのでは?と思う人がいるかもしれませんが、次の2つの理由があると思います。
①人との接点が減ったために、1つ1つの会話の影響がむしろ大きくなり、僅かな言葉を手掛かりと知った憶測を生みやすくなったこと
②急激な様々な変化に気後れがあり、「自分は十分貢献できていない」「自分はダメな人間」など、自分で自分を責めている状態は、人からの言葉を「(すべて)人が自分を責めている」とバイアスをかけて読み替えやすくなること
こうした状態、1日や2日ならまだしも、1週間、もっと長く続く人もおり、それはとても耐えがたいものです。どうしたらいいでしょう?とよく聞かれますので、思いつく方策を述べてみます。
①リミットセット
ひとつめの方策は、リミット(限界)を設け、これだけ悩んだのだからもう自分を許そうと、時間で自分をリリースする方策です。
自責の念にかられやすい方は、放っておくと、色々な場面で、時間を惜しまず、あるいは自分の気力体力を惜しまず、物事にエネルギーを費やす傾向があります。そうした傾向に思い当たる方は、自分なりのリミットを設けて、自分を積極的に許すことが大切です。何日か気にしても解決につながらないなら、考え続けるのを一旦やめましょう。
②注意を他に向ける
私たちの脳には情報処理のキャパシティがあり、普段から、自分の周りにある無数の情報の中から一部を特定してピックアップし、情報を処理しています。
この性質を逆手に取り、注意をむけてしまっていること以外に注意が向くように自分を仕向けること、これもお勧めです。
ぐるぐる思考が止まらないなら、その場から離れて歩いてみるのもいいです。また、料理など、少々の危険(火やナイフ)を伴う家事を行い集中する、そこまでやらなくても、とりあえず温かいお茶を飲む、でもよいでしょう。喉を通して体が温まる様子に注意を向けることも役立ちます。
人との接点が減ると、自分を客観視する機会が減ってバイアスが入り込みやすくなります。上手く自分のバランスを保って過ごしていきましょう。