年始早々の首都圏での緊急事態宣言、これまで通勤での勤務に戻っていた方の中には、再びリモートワークとなって、思ったように仕事が捗らないと感じる方も増えてくるでしょう。

リモートワークはアドバンテージが沢山ありますが、特にコミュニケーション面でストレスを感じるとの声を多く聞きます。

年始初回のコラムは「文脈効果」についてお話します。

文脈効果

文脈効果とは、1955年に認知心理学者のブルーナーが述べたもので、周囲の情報や状況によって対象の認識が変わることを言います。

ブルーナーは、書き崩したB(右図)をどのように知覚するかについて、事前に「L,M,Y,A」という文字列を見せたグループと事前に「16,17,10,12」という文字列を見せたグループを比べました。前者の多くは書き崩した文字を「B」と認知し、後者の多くは書き崩した文字を「13」と認知しました。

日々の生活では、「かいとうしておいて」と言われたとき、それが料理の場面であれば「解凍」、お客様との場面であれば「回答」と、その文脈を読んで言葉を自然と理解します。

若干の言い間違いや誤字脱字があっても日々のコミュニケーションが円滑に運ぶのは、この文脈効果のお蔭です。

リモートワークにおけるコミュニケーションのイライラ

リモートワークとなって、ちょっとしたコミュニケーションの行き違いや些細な抜け・漏れがあり、「小さなイライラが蓄積する」と話す方が多くおられます。

職場で顔を合わせていた時であれば、自分と相手だけでなく、同僚同士の話し声、職場の雰囲気・ざわつきなど、言語・非言語(しぐさや声の大きさ・トーンなど)双方の情報が飛び交っていました。文脈を理解する上で重要な情報が多岐に亘って存在したのです。

そのため文脈効果は大きく、あいまいな言い方でも相手は理解してくれるし、ちょっとしたミスはその場で指摘しリカバリー出来るという安心感もあります。

一方、リモートワークでは互いの顔が見えない、周囲の同僚の話し声が聞こえないなど、得られる情報が限られ、コミュニケーションのちょっとした行き違いや些細な抜け・漏れがあった時の文脈を把握しにくくなります。また、相手との意思に相違がある時の疎通というものに時間がかかるため、結果として面倒だから目をつむることもあるようです。

文脈効果を高めるには

ブルーナーの研究に基づくと、文脈効果の前提は、事前情報の周知と徹底にありそうです。

リモートワークにおいてもウェブ面談での情報共有の場をこまめに持ったり、メールやチャットの文面を端的に、読みやすくしたり、事前情報の周知や徹底には様々な工夫があるでしょう。

まだまだ大変な状況は続きますが、リモートワークのアドバンテージを活かしつつ、弱点についてはちょっとした工夫を重ねてより働きやすい日々となるよう皆で努力していきましょう。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。