「学習性」と聞くと、勉強に関連するもので、ビジネスには無関係と思うかもしれませんが、学習性無力感は、“自分が無力であることを学習してしまう問題”のことをいいます。

新型コロナウィルスの直接・間接の影響で職場全体が苛立ち、「何を言っても聞いてもらえそうにない」、「会話そのものが減ってしまい、困ったことがあっても相談しにくい」、「ダメ出しばかりで出口が見えない」、こんな状況はありませんか?学習性無力感に陥りやすい状況となります。

今回は、うつ病と似た症状を呈する学習性無力感(learned helplessness)についてお話します。

学習性無力感(learned helplessness)とは

心理学者のセリグマンが提唱したもので、長期にわたって抵抗や困難の回避が出来ないストレス状況に置かれた人や動物が、「何をしても意味がない」と学習し、簡単に活用できる手立てがあっても、それを利用しようという努力すら行わなくなることをいいます。

学習性無力感は、セリグマンによる犬の実験で証明され、その他、魚やネズミ、猫、サル、人においても同様の結果が得られました。

学習性無力感の集団への伝染

人については、個人が学習性無力感に陥るだけでなく、その無力感は集団に伝染すると考えられています。困難から抜け出せない人を観察することを通じて、他の人も自分の無力感を学習してしまうのです。

ただでさえ憂鬱なことが増えて職場のストレスが増している時です。個人の学習性無力感が集団に伝染することは何とか食い止めたいものです。

学習性無力症から抜け出すには

①感じている無力感が、実際に自分が無力であるのではなく、自分の頭の中で無力であると思い込んでいることに気付くことが大切です。

②無力感に陥りやすい性格傾向のひとつとして、完璧主義が挙げられます。「やっても完璧でないなら、初めから何もしない方がまし」という考えは行動を委縮させます。プロセスを重んじ、自分が日々の生活の中で出来ていること、うまくいったことを素直に認めましょう。

③行動してみましょう。同時に「行動したからには手ごたえがあるべきだ」という考え方は手放しましょう。手ごたえのない時に大きく失望するからです。行動しないと変化のチャンスも生まれません。

④相談しやすい人に今の状況を伝えてみましょう。自分の主観と現実がくっついてしまっている状況を改善するには第三者の視点がとても役立ちます。

社会全体のストレスフルな状態はしばらく続きそうです。自分や同僚が無力感に陥らないよう、互いにしっかり支え合っていきましょう。