このところ、だいぶ街に人が戻ってきました。通勤電車も以前より混雑が目立つようになり、お店ではおしゃべりの弾む人たちも増えて、人との距離感が小さなストレスになったりしていませんか?

私自身は先日、お昼の時間帯にオフィス街の喫茶店に入ったのですが、とても混雑していて、空いていたのは2メートルほどの直径の大きな丸テーブルだけでした。8席ほどに仕切られ、隣との間に小さなシールドが置かれていましたが、隣の方との距離がとても近くて居心地の悪さを感じました。

パーソナルスペースとは、「他に近づかれると不快に感じる空間」のことです。

私自身、コロナ禍の新しい生活様式の中で一旦身についたパーソナルスペースが再び縮小することへのストレスかもしれないと感じています。

第81回で1度話題としていますので、今回はパーソナルスペース(個人空間)が人によって異なる理由についてお話します。

ジェンダーの違い

一般的に女性は男性よりパーソナルスペースが小さく、また男性と女性とではパーソナルスペースの形が違うと言われています。男性は正面が長く、後ろが短い楕円型(正面約150センチ、後ろ約80センチ、横約10センチ)、女性は前後左右半径が一定(約60~70センチ)の円です。

先の喫茶店の私について考えると、私は隣が近くて気になりましたが、周りの方は男性陣で気にする様子がなく、男性は隣の人との距離より、正面が開かれていたらOKなのかもと思いました。

年齢の違い

子供はスキンシップを求め、また好奇心の赴くままに対象に近づく傾向があるため、パーソナルスペースが狭いと考えられています。パーソナルスペースは年齢と共に広がり、40歳前後でピークとなります。40歳前後がピークとなるのは、最も自立を求められる年代だからということのようです。その後、年齢を重ねるにつれて小さくなっていく傾向があるそうです。

年齢を重ねるとパーソナルスペースが小さくなることの理由を個人的にはもっと知りたいのですが、体力や気力等の衰えを背景に、次第に人を頼りにするようになるからというくらいの理由しか見つりませんでした。

国やカルチャーの違い

国や文化によって人とコンタクトを取る頻度の高い国(ハイコンタクト)と、頻度の低い国(ローコンタクト)があります。前者はパーソナルスペースが小さく、後者は大きくなります。

ハイコンタクトの例はアラブ、南米、地中海沿岸諸国、ローコンタクトの例は北欧やアジアの国々、オーストラリアや北米は中程度です。

また、北半球の国々では南部において、北部よりコンタクトが多いといわれています。

気候の影響

2017年にパーソナルスペースの異文化比較に関する大規模研究(42か国、9千人弱)が発表されました。

 

気候とパーソナルスペースについてとても面白い点が述べられています。

気候の温かい国々は寒い国々よりパーソナルスペースが小さいそうです。

先ほど述べたハイコンタクトの国の多くが気候の温かい国々であること、温かい国々では感情が高まる傾向があることと関係があるようです。

この研究では、人々の関係性(見知らぬ人、知り合い、パートナー)とパーソナルスペースについても調べています。

温かい国々では寄生虫や感染症のリスクがあるため、ごく親密な関係においてはむしろ距離を少し取って生活しているというのです。最もな知恵です。

こうしてみると、パーソナルスペースの多様なあり方がよくわかります。

新しい生活様式、といわれるものも、情勢によって刻々と変わっていきます。

自分や大切な方の安心と安全のために、人固有のパーソナルスペースを理解し、尊重して過ごしていきましょう。