有名女優が自殺なさったというニュースがありました。以前の人気俳優やプロレスラーの自殺もカウンセリングで話題となりました。ファンの方、年齢の近い方にとっても大きな喪失となり、心が痛みます。
2020年8月までの自殺者数の推移
外出自粛期間中にあたった4~6月、自殺者が前年を大きく下回ったことを耳にした方は多いでしょう。その後ですが、予感は的中、7月以降、前年を上回る傾向にあります。
下の表は警察庁の発表データによる総数と男女別です。2019年データは折れ線グラフ(黒の数字)、2020年データは棒グラフ(赤の数字)です。
2020年7,8月の女性自殺者数
私がとりわけ注目したいのは、女性自殺者数の増加です。
女性の自殺者数(緑)は7月に前年を上回り、直近の8月は前年比200名近い増加となりました。男性に比べ、その増加の幅が大きくなっています。8月の総数を押し上げた主な要因が女性の自殺者数の増加であることがこのグラフからわかります。
これまで、自殺者数の男女比率は男性2に対して女性1と言われてきましたが、7月、8月は全体に対する女性の比率が35%にまで上昇しました。
女性自殺者増加の背景として考えられること
月次の公開データでは細かな内訳がわかりませんが、私は女性をとりまく雇用環境の悪化が一因ではないかと考えています。
直近の就業者統計(2020年7月分)によると、正規職員が前年同月比52万人増加の一方非正規職員は前年同月比131万人の減少となりました。また男女別には、男性が前年同月比24万人の減少に対して女性は前年同月比54万人の減少となっています。
非正規職員や女性に経済状況の悪化の影響が強く出ていることがよくわかります。
自殺の原因とうつ病
自殺の原因の1位は健康問題、2位は経済・生活状況、3位は家庭問題です。
自殺の原因である健康問題の中で最も多いのがうつ病です。うつ病の代表的な症状として「死にたい気持ち」があり、未治療のまま経過するとその気持ちがとても強まってしまいます。
コロナ禍で感染を恐れるため、うつ病の方が受診をためらうケースが多いと聞いています。
ご本人がうつ病であることに気付いていない場合も多いので、周囲の方の気づきがとても重要です。心配な方がおられたら受診を促してあげてほしいと思います。うつ病の予防は自殺者数の減少に大きく貢献してきました。経済危機を迎えている今こそ、お互いの健康を気遣っていきましょう。