コロナ感染者急増に伴い政府と都道府県知事の間のメッセージは統一性を欠き始めました。社会の不安や混乱がじわじわと広がっているように感じます。
今回は、私たちが自信をもって「世の中はこうなる、だからこうすべき」と言えない状況で陥りやすい「多元的無知」というバイアスについてお話します。
多元的無知の定義
多元的無知とは、自分以外の集団の考えについてのバイアスのことで、”誰もそう思っていないのに、みんながそう思っているに違いないと思う”ことです。
わかりやすい例は「はだかの王様」です。
2人の詐欺師が「愚か者の目には見えない最高の服を王様に仕立てた」と言います。王様の部下や市民は、愚か者と言われるのを恐れ、〝自分には服が見えないが、他の人には見えているに違いない“と思い込み、まるで見えているかのように振舞います。ある時、子供が「王様ははだかだ」と言いだし、漸く見えていないことを認めるようになったというお話です。
多元的無知が起きやすい要因
多元的無知は次のような要因で起きやすいと言われています。
①自分が集団の中で少数派であると思っていること
②人に比べて劣っていると感じていること
③集団から疎外されることを恐れていること
日本人は周囲からどうみられるかを予測しながら周囲に合わせた振る舞いを取りがちといわれているので、多元的無知は起こりやすいように思います。
多元的無知の例
コロナウィルスとの関係では以下のような例があるでしょう。
①在宅勤務となって上司とのコミュニケーションが急に減って不安だが、そう思うのは自分だけだろうと思って言い出せない
②社内の感染予防対策をもっと強化してほしいが、周りのみんなが平気そうに見えるから黙っている
③食事会に誘われたが感染が怖いので本当は断りたい。でも周りの皆は行きたいのだろうと考えてつきあう。
多元的無知への対策
自分の本心を隠して不本意な行動をとり続けることは大きなストレスにもつながりかねません。本来の他者配慮という長所が自分を苦しめることにならないよう、以下の点に気を付けて過ごしましょう。
①環境変化が著しく、また先行きが不透明な状況では、多元的無知に陥りやすいことを知っておきましょう。
②本当は違うと思っているのに黙ってしまうところに問題があるため、勇気をもって自分の思いや考えを話してみることが大事です。
コロナウィルスがきっかけとなって、漸く日本における働き方やライフスタイルの多様性が広がりました。
人がどうするかではなく、自分が本当はどうしたいのか、考えていきましょう。