ハリウッドの大物プロデューサーが長年に亘り、多数の女性、男性に対してセクハラをしてきたことが大きな問題となっています。アメリカではセクハラは既に1964年の公民権法で違法とされ、人権問題では先進国だったはずですので、先日のウーバーのセクハラ問題と言い、今回の問題と言い、驚愕した方、多いのではないでしょうか。
日本のセクハラ関連法案の近況
日本で初めてセクハラを理由とした民事裁判が行われたのは1989年です。その後1997年に男女雇用均等法11条が改正されて、ここで初めて女性に対するセクハラ規定が定められました。アメリカに遅れること30年です。
その後、2007年にセクハラ規定は男性にも適応されるようになり、またここ数年、セクハラについての法令改正等新たな動きがあり、日本の法制面はだいぶ整ってきました。
この数年の法令改正や行政の指針の内容は、知らないうちに抵触となると一大事、職場における自身の振る舞いを考えるためにも、しっかり把握しておきましょう。特に今年からは、育児・介護法案改正と同時に男女雇用均等法も改正されていますので、要チェックです。
2014年の事業主が講ずべき措置に関する指針の改正、今年1月からの育児・休業法、雇用機会均等法改正
事業主は以下の改正点を踏まえて就業規則や服務規程を変更して対応し、また社員に周知、啓発しなければいけないとされています。
① セクハラには男性から女性、女性から男性に加えて同性への性的言動(女性同士、男性同士)も含まれる
② 性別の役割分担意識に基づく言動(例えば宴席で上司の近くに席を指定する、お酌の強要、結婚や子供について尋ねる、男のくせに、女のくせに等)を無くすこと
③ セクハラに該当するかどうか微妙であっても事業主は広く相談対応すべき
④ 事業主は被害者のメンタルヘルス不調への対応を講ずべき
⑤ 妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とした不利益な取り扱い(例えば妊娠を理由に仕事を外された、出産や介護などを理由に昇格できなかった)について、禁止されていたことに加えて、事業主の防止措置義務を追加
⑥ 上司・同僚が職場において就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講ずべき
例えば、女性同士、男性同士の職場の飲み会で、同僚の異性関係をからかったり(①)、「早く結婚したほうがいい」(②)、「育児時間を取っている間は仕事を任せられない」(④)「男が介護休暇なんて、出世に遅れるよ」(④)など、皆さんの職場でも思い浮かぶような言動がこれら法令等の禁止の対象となりました。
こうして明記されたことで、法令等の違反が指摘されやすくなり、かつてはグレーゾーンでセクハラとみなされにくかった事象が、セクハラと明確にされるようになった、このことはきちんと理解しておきましょう。
コーポレートガバナンス、企業価値と人権
コーポレートガバナンスとして法令遵守は年々厳しさを増しており、これら法令改正により、企業内の懲罰規定も厳罰化されていると思います。また、人権への取り組みをどれほど真剣に行っているかもその企業の価値を左右する時代にもなりました。単なるレピュテーションリスクや訴訟リスク、懲罰といったマネジメントリスクに留まらない話となってきたというのが現状の認識です。
セクハラは、長年の組織風土とも密接に絡み、無くしていくためには上層部から始め、社員全員一丸となって取り組んでいく必要があります。企業の屋台骨をゆるがしかねない問題という意識で取り組めるのか、企業の本気度が試されているのです。