「これまでのキャリアをさらにステップアップさせたい」、「働き方を大事に、残業が少ないところで働きたい」・・・転職の動機には様々なものがあると思います。経験者としての入社だからこそのプレッシャーも大きく、転職後うまく適応できなくて体調不良をきたすケースも多々みられますので、転職初期の心理に焦点を当て、その特徴や対策について考えてみます。
転職初期の心理とその背景
キャリア採用は、専門知識を持つ人材が欲しい、退職者に代わる人材を急募したいなどの事情から通年に亘ってチャンスがある一方で若干名募集という非常に狭き門となります。
そのプロセスで選ばれた人材には企業側からは即戦力としての期待が高く、また本人も前職以上のものをと、企業に対する期待を高く持つ傾向にある印象です。互いに期待し合う出会い・・・加えてすでに出来上がったチームに後から入るので、どうしても皆の注目が集まりやすい状況にあります。
このため、転職当初は、やる気に満ちたわくわくした感じと同時に非常に強い緊張やプレッシャーを感じているものです。
期待が高いということは、現実が期待と異なると感じた時の失望が大きくなる可能性を含みます。些細な失敗でこの先やっていけるかと極度に不安になったり、周囲の人との会話が少ないと自分が拒絶されていると思ってしまったり、極端な反応が出てくるのもこの時期の特徴です。
キャリア発達上の転職の理解
前回、ドナルド・スーパーのキャリア発達理論をご紹介しましたが、前職でキャリア発達上の確立期や維持期にあった方でも、転職して新しい仕事に就く場合には、再び探索期に戻ると考えられています。これは「後退」ではなく、キャリアは異動や転職など大きな環境変化をきっかけに行きつ戻りつしながら螺旋的に発達するものです。
転職をもって探索期が終わるわけではなく、その後も、この転職がよかったのかと迷いは続くものです。けれども、新しい仕事の業務内容や求められること、職場の人間関係など、職場側の様々な要素を探索し、一方自分の持ち味も改めて探索してみる、こうしたプロセスを経て、徐々に自分らしい働き方、あるいは新しい自分との出会いの感触を得て再び確立期、維持期を目指していけるのです。
適応を焦らないで
新しい職に適応するのにどれほどの時間が必要かは、①環境変化の大きさ(仕事の質や量の変化、人間関係の変化、生活面の変化など)②職場側・プライベート面のサポート態勢、③個人の特性等により個人差が大きいものです。
③の個人の特性については、ご自身が、進学や転居など新しい環境に入った時にどのようにして人や周囲の環境に慣れるタイプであったかを思い起こしてみてください。初めての環境でも全く気にせず新しい人たちと付き合える人もいれば、初め人見知りが強いが周囲の様子がわかると積極的になっていける人など、そのプロセスは様々です。
自分らしさを大事に
早く適応することが必ずしも好ましいものではなく、自分の適応のパターンやペースを大事になさった方が、より良い適応の質を得られるように思います。
皆さまそれぞれに新しい飛躍のチャンスが訪れますように。