職業人としての人生のスタート、その課題は?と聞かれたら、「早く仕事を習熟すること」、「仕事の基本となる学習をしっかりすること」、「職場の同僚と早く打ち解けること」などがまず思い浮かぶと思います。

でも、しっかりと頑張ろうという気持ちと同時に、「これがやりたい仕事なのか」、「適性と違うんじゃないか」、「自分にはもっと可能性があるんじゃないか」「続けていけるだろうか」と不安になったり、失望したりすることもあるでしょう。そんなネガティブな気持ちを抱く自分を「同期に比べて劣っている」、「お世話くださる先輩に申し訳ない」と思う人もいるでしょう。・・・こうした心理状態こそキャリア初期の特徴です。自分だけだと思う必要はありません。

キャリア発達上の「探索期」の心理

1950年代にキャリア発達論を提唱し、現代のキャリア理論の礎を築いたドナルド・スーパーは、キャリアを「成長期(14歳頃まで)」、「探索期(15歳~24歳頃)」、「確立期(25歳から44歳頃)」、「維持期(45歳~65歳頃)」、「離脱期(65歳以降)」の5つの期に分けました。*カッコ内の年齢はスーパーが記したおよその年齢です。

キャリアの「探索期」は、高校生になる頃から始まり、自分の将来就きたい仕事について具体的に検討を始め、仕事で要求されること、自分に出来ること・やりたいことを模索し、最終的に職業を選択していくプロセスですが、ドナルド・スーパーは入社してから約3年までを「探索期」と考えました。これは私の心理臨床の実感にもフィットしたもので、重要なポイントだと思います。

キャリア初期は「探索期」の締めくくり・「確立期」への移行期に当たりますから、自分の可能性をもっと模索したい気持ちと、安定した生活や社内のポジションを築きたい気持ちの葛藤がつきものです。

探索期と離職率

厚生労働省発表の大学卒の3年以内離職率はこの20数年3割前後で推移し、大きな変動はみられません。就職四季報で個別企業の離職率が掲載され、働きやすい職場を図る一つの尺度のように用いられる傾向があるようですが、大卒後3年間が探索期であることを思えば、新しい職業選択のために離れる方がおられるのは自然と思われます。

おわりに

ただし、職業選択を変える決断は慎重に。「現実が思っていたものとあまりに違うから」と焦って辞めても、次の先でも同様のギャップを感じる可能性はあります。石の上にも3年、これでいいのかと、揺らぐ気持ちを抱えつつも仕事に就いているうちに、ささやかな成功体験や嬉しい出来事がきっかけで、「この仕事・この仲間で頑張ろう」と物事の見え方や考え方が変わるチャンスはあるものです。

写真は国内諸街道の起点となる日本橋の道路元標(どうろげんぴょう、<レプリカ>)です。さあ、これからどんな道のりとなるか、焦らず、慌てず、あきらめずに歩んでいってください。