五月病というとおり、春は職場では上司の交代、自身の異動や転勤、昇格、家庭では子供の進学や進級など色々なイベントをきっかけとした新しい環境変化への適応が問題となります。同時に、気づかれにくいのですが、期待していたイベントが起きなかったことをどう受け入れるかという側面も非常に大きな問題で、この時期のご相談にも多く見られます。

 イベントが起きなかったことの心理的影響

例えば「長年部署内の人間関係に苦しんできたので、春の異動を希望し、期待したがだめだった」「仕事で成果を出したので、当然評価が上がると思って期待したが、上がらなかった」というような内容です。

異動を目指すことで辛い時期をこらえた人、評価が当然上がると期待した人にとっては、客観的には環境は変わっていなくても、「それが起きなかった」ことは大きなショックであり、この先どうやって頑張ればいいのだろうと絶望的な気持ちになります。仕事が変わった等、きっかけとなるイベントがあって対象が明確であれば、日々苦闘しつつも新しい環境を具体的に検討していくことが可能ですが、イベントが起きない場合はイベントを期待していた自分を激しく責めたり、自分の期待の実現を妨げた外的要因(例えば人事や上司)を激しく責めたりすることが起き、現実に向きあうこと自体が辛くなることもしばしばです。

 シュロスバーグ:イベントとノンイベント

キャリア教育学者のシュロスバーグは、人にとっての転機は、こうしたイベント、ノンイベントのきっかけで始まり、次のような情緒の経過があると考えました。

・転機の始まり:喪失感、否認

・転機の最中:空虚な感じ、混乱

・転機の終わり:嘆き、受容

転機への対処

常に前向きでないといけないような風潮が職場にはあるため、ネガティブ感情に支配される自分にうんざりするかもしれませんが、これは転機の特徴です。色々な感情が押し寄せる中では自分が前に進んでいる感じは微塵も持てないものですが、シュロスバーグは転機を乗り切るためには、変化を受け止め、成功が期待できる対策を練って行動計画を立てることが大事で、特に次の3点が大事だと述べました。

① 豊かな選択肢:転機を乗り越えるための多様な方法を知っている。

② 豊かな知識:自分自身をよく理解している。

③ 主体性:転機を乗りきるための状況分析、自己分析、サポートの活用、戦略について主体的に取り組む。

願った現実が手に入らなかったと感じている皆さん、悔しさ、失望、怒りといった気持ちを抱えるのは当然のこと。大型連休後半、少しの間ですが職場から離れて大いにリフレッシュなさってください。激しい感情が落ち着きを見るころ、少しずつ冷静に考えていける時がくるでしょう。